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人生を全て捨て効果発動☆
19話あげました。これで次回からようやくこいし戦です。
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フランドール・スカーレットVS古明地こいし 18 斯くも大きな太陽が昇る④
斯くも大きな太陽が昇る④
 朦朧としていた意識が元に戻った。お空は太陽の下で何かが起きているのを感じたからだ。
 うねるような圧倒的力の奔流・・・・・・これはお空自身も大きな力を行使するからこそ敏感に受け止める。
 太陽と核のエネルギーによって温かくなっていた大気はすでに冷え、空気が張り詰めていた。太陽を落としてから数秒しか経っていないというのに服を湿らせていた汗が冷え、べったりと肌についている。お空の体温は下がりつつあった。
 すでに満身創痍で翼の羽ばたきのみに身を預けていたお空だったが、今ここに来て全身の筋肉を引き締めてバランスを整える。これが精一杯の臨戦態勢だった事はなによりもお空自身が自覚していた。
 ラストスペルを放った今、体はこれ以上の戦闘は不可能と告げてる。だが事態はどうやら思い通りにならないようだった。
 パン、と何かが軽くはじける音が聞こえたような気がした。発砲音にしては重圧が軽すぎたし、拍手のような手と手が合わさった音でもない。指を弾いた音に近かったが、そこまで捻ったような音でもない。
 そのうちパン、パンという音は何度も繰り返された。はっきりと聞こえるようになって、ようやくこれが風船が割れたときにする音だということに気付く。と同時に音が大きくなっている事、つまりその見えない何かがさっきよりも近くに来ていること事に気付いた。

 「フラン・・・ドール・・・・・・?」

 かすれた声で敵の名前を呼んだ。太陽の下で何が起こっているのか、お空には事が起こるまで確かめる術は無かった。
 ただ、この場所に留まる事に何か嫌なものを感じた。堤防を越えてやってくる津波に飲み込まれそうな・・・波のすさまじい音だけが聞こえるが、その向こう側がどうなっているかが分からない恐怖感。
 そう感じるというのに脳というのは不思議なもので、わざわざ刺激として取り込みたいという欲望を恐怖が刺激する。

 「なにが起こっているの」

 わずかに残る活力を使い、翼の羽ばたく間隔を緩めてお空は無謀にも降下しようとする。
 ・・・・・・と、数メートル降下した時点で自身が放ったサブタレイニアンサンを思い出した。当たり前だが、自身が放ったスペルだからと言って自分が巻き込まれないという道理は無い。
 このまま降下すれば爆発の範囲内に踏み込んでしまう。元よりお空にとってこれが初めてのラストスペルだ。予想はしているが渾身の力を込めたサブタレイニアンサンは自身の予想を上回るかもしれない。

 「(駄目だ、近づけない)」

 そう思ったお空は体に鞭を打ちすぐさま旋回方向を変えて、斜めからその様子を捉える事にした。
 

 ※※※


 その光景をいち早く察知したのは他でもない、観戦していたこいしだった。フランドールが落ちた場所を見渡せる位置に居た為その行動を把握するに至った。さすがのこいしも立ち上がって、もっと近くで見なければと目を細める。土煙ではっきりとは見えないが、七色の翼がその中で輝きを更に強めていた。
 こいしが見た七色の翼は、血液が循環するようなとてもリアルなものだった。きっと摩訶不思議な力がフランドールの翼の内部を駆け巡っているのだろう。一見飾りのように見えるあの翼にもちゃんとした血液が流れていたことを再認識させられる。
 やがて、流れが加速しフランドールの手元から空を切るような音が響きだした。
 
 「あれがフランのラストスペル・・・・・・!」

 思わず声を上げる。
 こいしがそれをラストスペルと特定できたのは背筋に寒気がするような単純な力の強さを感じ取ったからだ。お空よりずっと知覚に敏感なこいしはより受け止め方が大きく、興奮した。

 「そんなものが使えるなんて・・・やっぱりすごいよ・・・フラン・・・・・・!」

 つま先から頭のてっぺんにまで軽い電流が走る。興奮は最高潮だった。

 「貴方がみせたフォービドゥンフルーツもそして誰もいなくなるかもスターボウブレイクも、それに比べたらまるで遊びね。
  前のときは遠慮してくれていたのかしら? うふふ・・・」

 今までに見たことが無いような無慈悲な破壊。これこそ、こいしが求めていたモノ。こいしがフランドールを望んだ理由の1つだ。それがあのサブタレイニアンサンとぶつかり合えば・・・どんな事が起きるのか?
 想像するとこいしの小さな膨らみの先が隆起し、秘めた部分は蜜で濡らした。それほどに興奮を隠しきれなかった。・・・・・・元より隠す相手などいないのだが。
 
 「お空・・・・・・死んじゃあ嫌だよ」

 言葉とは裏腹にこいしの口元は醜く歪む。それはお空がもう助からないことを示唆していた。


 ※※※


 「495年の波紋というスペル、あれはもう絶対に使っちゃ駄目」

 フランドールの姉であるレミリアはそう言った。
 博麗の巫女と戦った時に使ったそのスペルはわずか3秒放っただけで紅魔館の半分を吹き飛ばすという嘗てない被害を引き起こしたからだ。
 奇しくもその時は博麗の巫女の不思議な神業にて無効化されたのだが・・・。以降、そんな禁止令をレミリアはフランドールに対して出していた。・・・出していたのだが、やんちゃなフランドールがそんな姉の命令を素直に受け入れるわけがない。
 2度目に使ったのは蓬莱の人の形との戦闘の時だ。その蓬莱の人の形は結局今も生きているが、後で「数千回死んだ。もうあんな死に方は暫くはこりごりだ」と言わせるほどの威力だったそうだ。
 ただその威力の代償か、2度ともフランドールは放った直後に意識不明となっている。
 元々ラストスペルはその名の通り最後の技の為ひどく体力と魔力を消耗するのだが、攻撃に特化したフランドールのラストスペルは特に体力と魔力を多く消耗するのだ。
 万全の状態でもそんな事になってしまうというのに、今のこんな状態で放つラストスペルはどれほどの反動が襲い来るのか・・・・・・しかし、フランドールはそんなことは省みなかった。
 また倒れてしまう・・・後にどんな結果が残るのかはわからないが・・・・・・大地に太陽が落ちる被害に比べればましだろうと、そう考えたのだ。

 ――――――フランドールがラストスペルを放つ体勢をとる。
 寝転んだままだったフランドールの七色の翼が伸び、一本ずつグサグサと大地に突き刺さった。このスペルの発動にそれほど大きな衝撃の反動は無いが、相手スペルの衝撃が予想不可能だったため身体を固定する。
 一歩でも間違えば太陽どころか里まで同じように巻き込んでしまう危険性を孕んだスペルだ。事は万が一にも備えなければならなかった。
 フランドールが両の手首を近づけ、落ちて来る人工太陽に標準を合わせると手元で風が鳴った。
 軽く深呼吸をし息を吹きだすようにそのスペルの名を開放した。
 
 「Q.E.D.・・・・・・495年の波紋・・・・・・!」

 スペルカードは呼びかけに答えるとゆっくりと胎動を始めた。影響を受けてか、宝石が刺さった大地に亀裂が走る。
 
 Last Spell!!! QED「495年の波紋」

 手元で出来上がった黒い糸を巻き込んだような風が先行して上空へと大きく渦を巻きながら駆け上がる。続いて小さなシャボン玉のようなものがフランドールの手元の空間から1つ、また1つと現れた。


495 3


 ごく普通に流れにのってそのシャボン玉は上昇すると、数メートルのところで弾け飛んだ。まだ現象は終わらない。今度は弾け飛んだ場所を基点として空間に波ができる。
 池に小石を投げたときに出来るあの波だ。その波は真横に広がらず、進行方向を上に定めて広がり始めた。それだけではない、その広がっていく空間、輪の中には薄い膜のようなものが張っていた。
 次から次へとシャボン玉はいくつあるのか数えられないくらいにフランドールの両の手からポコポコと放たれる。
 第1波、第2波、第3波、第4波・・・・・・はじけ飛ぶシャボン玉の数だけその波ができ、波同士が交差し共鳴しあう。フランドールの上空に水面があるかのように波は美しく円を広げた。
 
 「(一見威力は皆無にみえるあの波紋・・・だけどそれがとても不気味ね)」

 こいしは今か今かと子供のようにはしゃぐ。
 そして、人工太陽と495年の波紋が触れ合った。第一波の膜の部分が人工太陽に触れると波が全体へと広がり、人工太陽の外殻が先程の空間とおなじように水面の如く揺らぐ。
 ―――――突如音も無く脆くも人工太陽は一部が粉砕された。欠けるわけでもなく、亀裂が入るわけでもなく溶けるように粉状と化し霧散する。波紋は人工太陽の外殻の破壊の目を完全に刈り取っていた。
 だが、それが引き金となったのか直後人工太陽は極光を放ち大爆発を起こした。ここに居た全ての生き物の目が一瞬反転する。
 これに一番仰天したのは、お空だった。何度も繰り返すがお空は忘れっぽいが本当の馬鹿ではない。サブタレイニアンサンもちゃんと地上と自分の位置を計算し自身に被害が及ばない高度から放ったのだ。
 勿論、大体の距離と落下速度も計算しサブタレイニアンサン発動後、何秒で地表近くに到達するかも頭に入れていた。目算では放ってからゆっくり数えて20秒。20秒で地表100mに到達し爆発する。
 ・・・・・・はずだった。
 不穏に感じたのは放ってから5秒後の事だ。朦朧としていた意識では何分かに感じられたが間違いない。そしてそこからまた5秒経ったときに爆発は起きたのだ。
 早すぎる、と思う前にキノコの雲がお空を巻き込んでしまっていた。

 「んっ!!」

 空気の輪が人工太陽を中心に広がる。雲が弾け、大きな地震が起こったような地揺れと暴風がこいしを襲う。それでもこいしの双眸は閉じることなくその光景を焼き付けていた。
 爆発は大気に悲鳴を上げさせたが、その衝撃は里にまでは到達していなかった。いや、到達できなかった。遮られたのだ。泡の膜の様な波紋・・・・・・495年の波紋に。本来ならば里にまで到達する衝撃を一切打ち消していた。
 何重にも重なった波紋の膜がトランポリンのようにバウンドし、衝撃を吸収すると同時に爆炎を飲み込む。決して小さな爆発ではなかったというのに、たったそれだけで人工太陽はその最後の輝きを終えようとしていた。
 そうして大気の振動が収まり、禍々しいその炎がすべて波紋によって消え去ろうとしていた。だというのにフランドールもこいしも気を緩めなかった。ほぼ沈黙した人工太陽だったが、その中にまだ輝きが残っていたを2人は知っていた。一握りほどの爆弾・・・それこそお空が放ったサブタレイニアンサンの中核。
 禍々しいその輝きは尚も落下をしている最中だった。495年の波紋が届いていたのはあくまで人工太陽の外殻にすぎなかったのだ。

 「・・・・・・今度は洒落になんないのが来るかな?」

 お空のサブタレイニアンサンの禍々しい輝きが予想以上だったからか、これにはさすがのこいしもサブタレイニアンローズのスペルを準備した。
 もしサブタレイアンサンの威力が本物だとしたら小さく見積もっても周囲数十キロは吹き飛ぶ。それにサブタレニアンサンの汚染は体に甚大な悪影響を残すことも知っていた。
 爆発を凌いだとしても汚染まで防げるとはさすがのこいしも思っていなかった。
 
 「はぁああああああああああああ・・・・・・!!」
  
 その合間にもフランドールは放ち続ける。
 さすがの495年の波紋も風圧までは防ぐことはできなかったが、翼による体の固定が甲を奏して依然命中精度に問題は見受けられなかった。
 495年の波紋はすでに第26波を超えていた。こいしの目には放たれれば放たれただけその波がだんだんと弱くなっていっているように感じられた。間違いではない、事実放たれたシャボン玉の弾は放たれるごとに小さいものへと変わっていっていた。
 一心不乱だったフランドールは自身の翼に亀裂がはいっているのことにすら気を回せない状況にあったのだ。
 それもそうだ、身体はそれどころではなかった。お空の核反応制御不能ダイブによって地面に叩きつけられた傷口は再び開き、繋ぎきっていない背骨はずれてカキカキと悲鳴を上げている。
 ・・・・・・無視をする。吸血鬼の再生力があればこそ、の所業であった。力技ともいうが、今ここに至ってはそれこそも重要な要素の一つであった。体内の細胞一つ一つから魔力を搾り出して、手元手元へと送り出す。その結晶ともいえる泡がまた1つ手元から弾き出されると、極度の疲労感に襲われた。
 それでも、まだまだ終わらない。波紋の共鳴は多ければ多いほどその威力を増すからだ。・・・・・・今の放出ではまだサブタレイニアンサンの一撃に備えうるか危うかった。

 「――――――来る!!」

 人工太陽の外殻が崩れ、空中で発生した爆炎をすり抜けてついにフランドールの目にもその光弾が映る。
 あの一握りほどの小さい光弾が、まさしくお空のラストスペルと認識する。最早幾ばくの猶予も無かった。着弾までの刹那、最後の波紋を生み出すと七色の翼の亀裂が広がり宝石は瓦解した。

 「・・・・・・っはぁ!!」

 脳内で張り詰めていた糸が焼き焦がれた。同時に、静かに空が明るくなった。
 音が消え、目が焼かれるほどに眩しい光が全てを飲み込んだ。サブタレニアンサンと495年の波紋が触れ合ったことで引き起こった壊滅の光だった。
 再び波紋の膜が膨らみ、1つ、2つと割れていく。突き刺すような光が次々と波紋を通り抜けていく。その一方で確実に波紋も光を侵食していた。
 波紋と光が混ざり合い天空に白い渦ができる。フランドールは虚ろな目でその渦を見守り続けた。
 戦いはこれにて終焉を迎える。夜と昼が逆転したかのような、そんな声にもならない現象の果てに残ったのは――――――――
 


 ※※※


 
 奇跡的に、お空は一命を取り留めていた。自身のラストスペルであるサブタレイアンサンに巻き込まれながらも、彼女が生存できた理由は一重にその核シェルター並みの黒翼の防御に他ならない。
 人工太陽が最初の爆発を引き起こしたときにフランドールに喰らわせた核反応制御不能ダイブよろしく、それの応用方法でその場から離脱をしていた。しかし、その後地上に無事着地・・・とはいえず、最後は爆風に吹き飛ばされ地面に叩きつけられる格好となった。
 叩きつけられたときに翼の骨格が折れたのか歪んだのかはわからないが、それに伴う痛みがこれ以上の飛行は不可能と宣言してた。だが、お空はこれだけの規模の爆発でたったそれだけの被害で済んだことを幸運に思った。爆発にまさか自分が巻き込まれることなど予想外の事態だった為慌てたが、それでも事が済んだ今となってはもう過ぎたことだと忘れ去った。
 この戦いでほぼ全てのエネルギーを使い切ったといえよう。そして、あのフランドール・スカーレットを屠った。最後の局面で何かをされ予想以上に上空で爆発したことは確かだが、サブタレイニアンサンの爆発は結局は止められなかった。
 となるとこの戦いの勝利は必定、万が一にもあの崩壊の光から逃げおおせることもできないだろう。十分に満足感のある戦いだったと・・・・・・そう一息付いたときだった。

 「けほっ」

 咳き込む何者かが舞い上がった砂埃の中から現れた。 
 お空の表情が凍てつく。
 ・・・・・・・・・咳込みながら出てきたのは、死んだはずのフランドール・スカーレット本人だった。
 
 「・・・・・・うそ」

 ただし、明らかにそれは深刻なダメージを負っていた。かろうじて生きているという程度の呼吸音、肩で息をしていることが明らかな疲労を物語っている。加えてあれだけ魅力的だった七色の翼も今や見る影も無い。
 魔力の使いすぎで朽ち落ちたのか、はたまた地上に叩きつけたときに千切れ飛んだのかは知らないが、その翼が再生する様子は全く見受けられない。

 「・・・・・・あれを喰らって・・・どうして生きていられるの・・・?!」
 
 驚きは無理も無い。お空は何も知らなかったのだ・・・・・・フランドールもお空と同じように渾身の一撃、ラストスペルを発動していたことも。出力は圧倒的にサブタレニアンサンが上だった。だが、それはあくまで出力の話。
 仮にフランドールが力には力をと、決めの一手として495年の波紋ではなくスターボウブレイクを放っていたらお空の勝利は揺るがなかっただろう。
 だが、お空は運が悪かった。スターボウブレイクはすでに手元に無く、フランドールが対抗する手段は495年の波紋しかなかったのだ。
 495年の波紋の原理はありとあらゆるものの破壊。フランドールは目標の破壊の目を掌に召喚し、それを握りつぶすことで対象を破壊するが、このラストスペルは更に上位、波紋に触れた破壊の目を直接攻撃し破壊する。
 目標を確認する手間も、掌に召喚する手間もない。そして一番違うのはその効果範囲の広さだ。通常の能力では対象を1つに絞ってでしか発動できない技だったがこの波紋に至ってはそれがなく、触れるものがある限り、壊しつくし原子分解を引き起こさせた。
 フランドールの通常の能力に対しては無敵を誇っていた人工太陽の破壊の目の数も全て波紋に触れてたちまち消えていった。これを相性的に分かりやすく例えると水で火を消したようなものだった。
 そんなことを知る由もないお空はうまくやったと思っていた。
 お空はこいしからはフランドールの能力を聞いていた。ならば逆に人工太陽という破壊の目がありすぎるエネルギー体ならば目標にとることができないからあの力を使えないと考えたのだ。
 故に自信満々にこの人工太陽がエネルギー補充装置であるとまで語った。あの場はフランドールも力を失っていたため使えなかったが、もし使えたとしても破壊の目がありすぎてどれを掌に召喚してよいかすらわからなかっただろう。
 破壊されない人工太陽、人工太陽からのエネルギー供給によるエネルギー保持、圧倒的パワー差・・・どれも完璧だった・・・。
 すでに過去形となった表現がお空の頭の中を交差する。
 その全てが悉く失敗に終り、ついにサブタレニアンサンまで攻略されたとなっては、万事休す。もはや打つ手は存在しなかった。

 「・・・・・・ひゅう、ひゅう」
 「卑怯よ・・・・・・卑怯!! あれを喰らって生きてるわけが無いじゃない!! 鬼でもくたばる筈よ!!」
 「・・・・・・ひゅう、ひゅう」

 虚無の表情をし、幽鬼となったフランドールが一歩一歩と前進する。肺か口のどこかに穴でも開いているのか、息をする度に風が通る音がした。その音が更に不気味さを引き立てていた。
 対するお空は着地の足がやられており、すでに立ち上がることもできず言葉を張り上げる以外の抵抗手段を失っていた。弾幕一つ飛ばすエネルギーすら何処へ消え去ったのやら。

 「ば・・・・・・ ・・・・ばけ・・・・・・ばけもの・・・・・・」
 「よう・・・・・・かいが言う・・・言葉・・・・・・かしら? くく・・・」

 無表情に悪鬼が宿る。お空はフランドールの二つ名をまだ知らない。
 ――――――シスターオブスカーレット(悪魔の妹)。もう隠すことは無い、紛れも無くこちらが本来の二つ名に相応しい表情であった。
 
 「・・・う・・・・・・」
 「神の力はどうだった? 最初は怖かったけど、徐々に慣れていって仕舞いにはあれほどの力を扱えたことにさぞかし満足だったでしょう?」

 フランドールの気迫に気圧されながら、それでも果敢に答えた。

 「私はこの力で守れると思ったの。貴方なんかには分からないでしょ? 守るものすら壊して愉悦に浸る貴方みたいな妖怪には!」
 「・・・・・・」
 「最初に会ったときから気に喰わなかった! なんで吸血鬼が昼間からまるで人間のように里の中を歩いてるの? 
  目障りだと思わないの?! ・・・・・・まさか貴方・・・・・・自分が人間の中に混じって生活できるとでも?」

 お空は息継ぎもせず必死に言葉を並べる。ばれてはいない。用心しながら制御棒を失った右手で一矢報いる一撃を捏ねる。先刻正々堂々などといっていた事も忘れ、不意打ちを仕掛けるために。
 フランドールとお空の距離は3歩分程、一歩踏み込んで体を倒し腕を伸ばせば心臓を抉れる距離だ。
 お互いにすでにいつ倒れてもおかしくない。だが、不利なのは腰を落として座り込んでいるお空だった。丁度一手分、足りない計算を何で補うか頭をフル回転させる。
 フランドールは鼻で笑った。お空の行為ではなく、お空の言葉にだった。

 「私は人間になりたかった。笑えばいいよ、でも私はそれでも人間として生まれたかった。それは不可能だった。十分に分かったわ」
 「さとりさまも、こいしさまも普通の人間に生まれたらよかった。そうしたら種族による差別は受けなかった」
 「受け入れるよ。叶わない願いに、いつまでもすがっているのはらしくないでしょ? こいしも私が倒す。あいつも」
 「こいしさまを軽々しくお前の目線で語るなああああああああああああ!!」

 怒涛と共にみたびお空の右足が炸裂した。象の足がついにその反動にも耐えれずに瓦解する。勢いよく飛び上がったお空はそのまま右手を突き出し凝縮させたエネルギー弾でフランドールの心臓を直接抉ろうと飛び掛った。
 フランドールはそれを見上げ、そして、最後までお空を見続けていた。
 
 「・・・・・・あ」
 
 呆けた声は、お空のものだった。
 突き出した右手は、フランドールの心臓を捉えることはなく、胸の手前に現れた泡に当たっていた。右手に残ったエネルギー弾はわずか1cmほどの小さな泡に当たって消滅することとなった。
 飛び掛った勢いもその泡がエネルギー弾と触れ合った瞬間にパンと割れたと同時に失われていた。声にもならない痛みが走る。右手は逆方向へ向いていた。

 「いっ――――――――――!!」

 見えない壁にぶつかったかのように全てが遮断され、お空はフランドールの足元に崩れ落ちた。
 勢いを殺されたお空はそれほどの高さではないにしろ頭から落ちた衝撃からか、もう飛び回ろうという気配は消えていた。意識が飛ばなかったのは幸か不幸か。
 お空は右手の内出血を抑え、まだ諦めずに再起しようと顔を上げる。
 
 「495年の波紋」
 
 お空が崩れ落ちる前にいた空間は波紋が走り、ぐねぐねと歪曲していた。その空間に手を入れようものなら一瞬で分解された。本来なら破壊と呼ぶべき行為だが、破壊という言葉を当てはめるにしてはそれはあまりにも静か過ぎた。
 
 「あ・・・・・・ああ・・・・・・」

 ようやくお空もこの力の差を理解する。どうしてサブタレイニアンサンが途中で爆発したのか。何故衝撃は里に、フランドールに届かなかったのか。破壊の光が何も焼き尽くすことがなかったのは・・・・・・どういう理屈があってか。
 そうして理解すると、足元が泥沼のように沈んでいった。否、先程まで必死で立とうとしていた足が戦意喪失したと同時に筋力を失い、へなへなとその場に座りむ形となっただけだった。
 
 「・・・・・・・・・終わりよ」

 弾幕ごっこの域はとうに超えている。これは生きるか死ぬかの戦いだ、それは誰よりも喧嘩を売ったお空自身が心得ていた。弱肉強食、自然社会の当然の理(ことわり)。今度は自分が食われる番が着ただけの事なのだ。
 この期に及んで命乞いなど、するはずもなかった。 
 制御棒を失い、人工太陽を失い、スペルを失い、翼を失い、足を失い・・・・・・残ったのものはなんだったのか。
 目を閉じると脳裏に浮かぶのは、さとりさまとこいしさまの笑顔。お燐もさとりさまのふとももでゆっくりしていて気持ちよさそうだ。はっきりと思い浮かべる事ができた。
 これが残ったものだとするのならば前回の死とは違って、何故か心地いい。悪くない・・・・・・とお空は思った。
 ――――――心残りはこいしさまの事か。
 そうして頭か心臓に打ち込まれるであろう一撃を覚悟した。――――――気配が、来る。
 
 「待って!!」
 
 割って入った声に、フランドールは右手の爪による一撃を寸のところで止めた。
 その聞き覚えのある声に、お空は恐々と目を開くと・・・・・・そこにはいつもの主人が立っていた。横にはお燐が人間の姿で付き添っていた。

 「さとりさま・・・」

 お空はなんともいえないバツの悪そうな顔で主人の名を呼んだ。
 割り込まれたフランドールは顔だけをさとりへと向ける。一緒に居たお燐は幽霊でも見たような顔を一瞬見せたが、すぐに平然とした顔に戻る。死霊を扱うお燐だから分かった事だが、本当の死人のような顔をしていた。そう感じたというのにフランドールの表情はひどく悦んでいたことが気色悪かった。 
 そう思ったのも一瞬、フランドールの顔は無表情に戻る。・・・・・・いや、何かとても辛そうなものを押さえ込むかのような無表情だった。
 場に居たお空以外の3人の時が止まる。誰もがどう動いていいかわからなかった。
 フランドールがお空に止めをさすのか、さとりがお空を助ける為に何かを仕掛けるのか、はたまたお燐が動くのか。
 一陣の風が吹く。
 帽子のリボンが揺れると同時に時が再び流れ始めた。・・・・・・もうフランドールの体はお空の方を向いていなかった。
 
 「・・・・・・自分のペットなら、今度からはちゃんと躾くらいしときなさい。そこの猫も含めてね」
 「私のペットが粗相をして、ご迷惑をおかけしました」

 嫌味っぽさと含んだ声だったが、正論だった。それを理解していたさとりは深々と頭を下げた。お燐も主人が頭を下げたのでそれに合わせて頭を下げる。
 興味をなくしたのか、体を引き摺りながらさとりの横を通り過ぎて再び砂塵の中へと消えていった。 “今回は、大目に見てあげるわ”というさとりだけに聞こえるよう心の中で呟きを残して。
 心を読めるさとりにも本心は分からなかった。本当にお空を殺すつもりだったのか、それとも・・・・・・血でも吸おうとしたか?
 お空はただただ呆然とフランドールの後ろ姿を最後まで見続けていた。
 さとりはそんなお空の顔を抱くと、ごめんねといいながら頭を撫でた。・・・・・・もう地上を焼こうとする愚神の姿は何処にもなかった。
 ――――――後に永遠亭と自警団による調査で分かったことだが、空で燃えた火は毒をもっていたはずだったらしい。
 しかし不思議なことに、調査の結果は里の人々からも土からもその毒は一切検出されず里上空で起こった核爆発は里に被害を及ぼすことはなかったそうだ。
 永遠亭の天才もこれには頭を悩ませたという。
 
 
 Spell Break!! 「サブタレイニアンサン」


 

 続く

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