FC2ブログ
人生を全て捨て効果発動☆
19話あげました。これで次回からようやくこいし戦です。
201811<<12345678910111213141516171819202122232425262728293031>>201901
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
フランドール・スカーレットVS古明地こいし 17 斯くも大きな太陽が昇る③
斯くも大きな太陽が昇る③

 「当て馬として考えていたのだけど。凄いものね、究極の未来エネルギー・・・・・・」

 こいしは一人、人気の無い里を悠々と歩いていた。
 陽が当たらないように大きな帽子を被り上空を見上げる。人工太陽に遮られ、しかしその戦いを彼女は手に取るように理解していた。
 七色の翼と漆黒の翼が天で踊る。

 「フラン・・・・・・。お空は馬鹿の一つ覚えでしょ? でもだからこそ普通じゃそこまでやらないことをやってくれるよ。うん、だからフランじゃもしかしたら
勝てないかもしれないね・・・ふふ」

 それはそれで寂しいことだが。それもまた運命。
 紅の剣が砕け散り、それに呼応するかのように天が万華鏡のように輝いている事を発見すると、こいしは一人ほくそ笑む。

 「へぇ―――やっぱ強いんだぁ」

 前言撤回―――――やはりこの勝負、どうなるかはまだ分からない。
 こいしは木の影となる場所に腰を下ろすとゆっくりと太陽を見上げた。あの太陽は核が作り出した素晴らしいアートだと彼女は思う。
 もしかしたらお空はフランドールを越えるかもしれない。それはそれで楽しみでもあった。
 どちらにせよこの戦いで勝ったほうが私の右腕となる。
 お互い競い、狂い、存分に戦って欲しい。

 「さぁ、フラン、お空・・・・・・楽しませて♪」
 
 でも願わくば・・・・・・。


 ※※※


 それは、泣いていた。
 それは、笑っていた。
 それは、悲しんでいた。
 それは、喜んでいた。

 思い出せる。
 3歩も歩けばすぐに忘れてしまいそうな頭だけど、あの日の事は全て思い出せる。彼女たち古明地姉妹とであった日の事を。
 そして、霊烏路空という妖怪について話さなければならないだろう。
 彼女が生まれたのは、さくらという花が何十回と咲いたくらい前の事だ。彼女は成長が他の鴉と比べて異常に早かった。
 鴉は卵から生まれて約1ヶ月で成体へと成長する。だが彼女はそれを3分の1、わずかに10日で終えてしまったのだ。同じ巣で育ったヒナは小さいうちに彼女の胃袋におさまることとなった。
 まだ春という季節が訪れて肌寒い頃だった。同時期に、サトリの少女達と出会う。
 生まれてから僅かに2ヵ月後の事だ。

 「ほーほけきょ、ほーほけきょ、ほーほげぎょぎょぐげ」

 鶯を頭から口に入れる。突然の事に鶯も足をぴくぴく動かしながら抵抗するが虚しく頭蓋を租借された。
 彼女にとって特別グロテスクな光景ではない。日常であった。しかし、鶯を食べたのはちゃんとワケがあった。
 春告鳥とも呼ばれるそれがでてくるにはまだ少し寒いだろうという弱肉強食の強者が唱えるような理屈だったが。
 柔らかな肉が舌で蕩ける。それでもまだ空腹で・・・気分はいつまでも空(カラ)のままだった。
 
 「風情が無いなぁ」

 まるで知り合いだったかのような気軽さで誰かが話しかけてくる。同類だろうか?
 いやいや、違うだろう。同類でもたまにお腹が減ったときは食べてしまうのだ。声が聞こえたら不味いだろう。言語を話す牛がいたのならそれを食する人間は少ないという理論と同じで。
 では何者だろう?

 「サトリ」
 
 サトリといったかわいらしい帽子かぶったを少女はにっこりと微笑んだ。
 一目でこいつは餌にはならないと判断する。

 「私は食べられないよ~」

 じゃあ去れ。食事の邪魔をするな。ぷい、とそっぽを向く。少女はそれでもなにやらと騒がしい。

 「だめー! うぐいすたべちゃだめー!」
 「こいし、無理を言ってはいけないわ。彼らはそうやって生きているのだもの」

 もう一人、少女が姿を現す。こいつはなんだろう?
 人間の女が二人。人間ではない? 妖怪?
 たぶん人間であっても動物の心が読めるなんて人間じゃない。だからこの二人はやっぱり妖怪に違いないと彼女は確信する。
 ・・・そもそも獣である彼女にとって人間か妖怪かなんて大して関係ないのだが。

 「だからー、サトリ」
 
 それは美味しいの?

 「おいしくないー!」
 
 美味しくないらしい。
 そんな話をしているうちにようやく張っていた胃が収まる。こっちは美味しかった。
 ピンク色の髪の少女がその光景にもう飽きたのか騒がしい帽子の少女を呼ぶ。

 「いくわよ、こいし」
 「はーい、お姉ちゃん。今行きますー。鴉さん次は悪いことしちゃだめよ」

 帽子の少女とお姉ちゃんと呼ばれたその二人の姉妹はそういって去っていた。
 鶯を食べてはいけないと言ってたが、何故だろうか? ・・・1秒考えても分からなかったので考えるのをやめる。

 「ガァガァ」 
 
 食べた後は木の上で昼寝をするのが気持ちいい。
 
 パァーン!
 唐突に乾いた音が響く。
 よく森で鳴っているその乾いた音が終わりの音であることを知らぬのは体験したことが無かったからだろう。無論体験することなど不可能だが。 
 あれ? なんだろう?
 ―――――――私はいつ地面へ飛び降りたのだろう?

 「ありゃ~、間違って鴉撃っちまったかぁ」
 
 胃の奥からなにかが突き上げてくる。死の嗚咽。
 致命傷だった。
 立つ事もできず、倒れると漆黒の身体、胃~口から通して流れる赤い血が地面を汚す。
 ああ、こんな最後か。大したことのない、まだ生まれたばかりだというのに、実に畜生らしい最後だった。
 成すべきこともなく、死ぬことに対して特に不満があるわけでもない。
 運命というのものよって私の道はここで断たれることが最初から決まっていのだ・・・・・・・・・と思う。
 でも、叶うのならば―――いつか憧れた天狗のように・・・・・・もう一度、生まれ変わるのならばなりたいと――――

 「そう、鴉さんは天狗みたいになりたかったのね」
 「(夢見ていたの)」
 「夢?」
 「(大空を、天狗様みたいにかっこよく飛び回る夢)」
 「へぇ……お姉ちゃん」
 「ええこの鴉、妖怪の素質があるわ」
 「(―――え・・・?)」
 「決めるのは貴方。まだ貴方は生きる選択肢があるわ。天狗ではないにしろ妖怪としての生を選ぶことを天から与えられているわ」
 「(私が――?)」
 「ええ、素質は十分。だって普通の鴉はそんなものに憧れない。喰らい喰われ短い一生を終えるもの」
 「(――――妖怪に)」
 「なっちゃいなよ♪」
 「(―――――――妖怪に――――なる)」

 考えている暇は無い。死は一刻一刻と近づいてきていた。単純な問いだ。生きたいか、生きたくないか。
 答えは一瞬を待たずとして出た

 「(妖怪になる・・・!)」
 「なら1つだけ、忠告しておくわ。貴方がこれからなるのは優美な鴉天狗ではない。もしかしたら鴉より劣る害悪な妖怪になるかもしれない。
  妖怪になるということは決して楽しいことではないわ。ヒトが抱える悩み以上のものを背負う可能性もある」
 「(――――私に耐えられる?)」
 「大丈夫よ、貴方は悩みなんか考えなくていいもの。貴方の悩みは私たちの悩みにしてあげる♪ だから貴方は―――空(カラ)でいい」
 「今は空っぽの出始めの妖怪。空(ウツホ)という名を貴方に授けましょう」
 「(空(ウツホ)―――悪くない響き」
 「悩めない稀有な能力。溜め込むことの無い邪念。私たち姉妹のとある一つの対極として生きなさい」
 「お姉ちゃん、理解できないわ。それ・・・・・・」
 「ようするに適当に生きていいってことよ」
 「・・・・・・・・・いいなぁ、それ」

 妖怪になって数年、行く場所もなかったため彼女たち姉妹の元で一緒に暮らした。
 一言で言うと、質素だった。
 人間にも他の妖怪にも関わらないようにしてとても、ひっそりと彼女たちは暮らしていた。
 いろいろな者が彼女たちの元で一緒に暮らしていた。そういえば、お燐に出会ったのもその頃だ。
 さておき、事件は青天の霹靂だった。
 その不協和音は以前からあった。
 彼女たちの元で暮らしていた私のような妖怪や動物は数を合わせて100を超える。中には気性の激しいものもいた。

 「なぁ、さとりさまー、人間って物を一度食ってみてぇんだけど・・・・・・」

 などと言ったのが発端だった。
 当然、さとりはそれを禁止した。

 「なりません。幻想郷において妖怪の本分は人間を“ある程度”恐怖させること。我々がわざわざ人里に行き絶対数が少ない人間を食い殺すことは許されません」
 「なんでですかー?」
 「無闇に人間を食い殺せば、人間は妖怪を無闇に退治するでしょう」
 「じゃあまた人間を食い殺せばいい」
 「それでは妖怪の本来の目的も失ってしまうでしょう?」

 はぁ、と溜め息をつきながらも説得の道を探す。長い話になりそうだ、と思ったが意外にすぐに彼・・・・・・人型をした犬の妖怪は折れた。
 
 「ちぇ~、わかりましたー(わからねぇんですけど)」

 心を読む。駄目だ、全然分かっていない。
 いずれ、しっかりとそのあたりの事も教えないといけないだろうとさとりは思った。
 今の幻想郷は不安定であることは賢者、八雲紫を通じて山の四天王から各統括する妖怪にまでお触れがでているのだ。
 人間と妖怪は共存すべし。人間は妖怪に喰われる事を恐怖し、妖怪は人間に退治されることを恐怖して生きなければならない。
 詳しくは知らないが、数年前に外の世界からやってきた西洋の『吸血鬼』という妖怪の事で一頓着あったようで、それ以降は掟というかそういう束縛のよう
なものが厳しくなっている。人間にとってよくない異変が妖怪の手によって起きれば紅白の巫女が退治し、人間が妖怪を異常なほど駆逐するようならば境界を
管理している妖怪が追放してしまう。そういう一定のルールが敷かれるようになった。ルールに従わないものは矯正される。
 それでもルールというのは破りたくなるものだ。
 その後すぐ、犬の妖怪の話に興味を持った数名の妖怪が寄り合いを開いていた。

 「おめぇら、人間の赤ちゃんの脳みそって食べたことある?」
 「ないないーw」
 「・・・・・・知り合いの妖怪に聞いたんだけどよ。メチャメチャ美味いらしいぞ」
 「まじで・・・・・・」

 どれもこれも妖怪として少しばかり長く生き、つい最近人型の形態に変身できるようになった者達だ。犬の妖怪、蟷螂の妖怪、百足の妖怪その他数名。
 特別強い力を持つわけではないが、それでも成人男性を軽く捕食する程度の力は持っていた。

 「やっちゃう・・・・・・?」
 「でもばれたらやばいぜ・・・・・・」
 「さとりさまとこいしさま、どっちも心が読めるしな」
 「まぁでもさ、許してくれるような気がしなくね?」
 「そうだな。なんとなく・・・・・・っていうか一人くらい大丈夫だろw」
 「よし、じゃあ事は早い方がいい」
 「今夜か」
 「今夜だ」
 「今夜だな」

 こうしてなんとも軽々しく決行される事に決まった。赤信号、皆で渡ればなんとやらである。

 「(大変だ・・・・・・)」
 
 その光景の一部始終を見てしまっていたのは他ならぬお空だった。
 今晩、その愚かな行為が行われてしまう。このことを早く誰かに伝えなければ。
 恐れた事は決して人間が喰われるからではない。それは人間と妖怪が存在する限りどんな形であれ摂理なのだ。
 獣の用語で、それを食物連鎖と呼ぶがそんな単語までは知る由はなく、ただただ本能のままにそう思っていた。
 ならば恐れることは何か?
 彼らは決して悪い妖怪ではない。むしろ善い妖怪に分類されるだろう。
 だが、きっとさとりさまの言ったことを無視して愚かな行為をすればきっと彼等が思っている以上にさとりさまは深刻な処罰を与えるだろう。
 
 “処分”する。

 彼女の頭の中にはそれだけがあった。さとりさまはとても優しいが、決して優しいだけの妖怪ではない。

 「・・・・・・」

 ただ、ちゃんと素直に話さえすればわかってくれれる人だ。

 「・・・・・・ううう」

 でも、言えない。言ったら、今度は仲間から私が告げ口をしたことがばれる。
 お空はどうしたらいいのか困惑する。そうこう考えている間に陽は暮れ、夜が近づこうとしていた。
 
 「(大変だ・・・・・・でもどうしようもないよ)」

 見て見ぬふり。
 それは・・・・・・できない。やはり、止めないと。
 そう思い切ったお空はこいしの言葉を思い出す。
 『貴方は悩みなんか考えなくていいもの。貴方の悩みは私たちの悩みにしてあげる♪』
 そうだ。
 こいしさまなら、きっとなんとかしてくれる。
 
 「(相談してみよう)」

 ―――――当夜。

 人が寝静まった夜。自警団の焚く火だけが薄暗く里の入り口に灯されている。
 お空がこいしに相談した結果、こいしがペットを止めるということになった。お空はそれではこいしさまの心を通してさとりさまにもばれてしまう(お空はそれをこいしに話してから気付いたので結局
手遅れなのだが)と言ったが、こいしは問題は無いとあっけらかんに話した。
 その事も疑問に思ったが、肩の荷が下りたお空にとっては最早どうでもよいことになっていた。

 「まぁまぁ、ここは私に任せなさい」

 すぅ、とこいしは闇に吸い込まれるようにして消えていった。
 一抹の不安を憶えながら、お空はその場に立ち続けた。


 ※※※

 「(遅い・・・)」

 どれだけの時が経っただろうか・・・30分程か、2時間程か・・・やがて闇の中から彼女が戻ってきた。

 「あっ、こいしさま。どうでし――」
 
 お空の声は途中で絶句へと変化する。
 暗闇から現れたこいしの姿・・・・・・かつて仲間だったであろう者達の返り血を浴びたその姿を見た瞬間に察した。

 “処分”した。

 「――――――」

 きっと彼らは欲望に逆らえなかった。だから刃向かったのだ。
 主人に刃向かったペットの処遇は、これはもう一つしかなかった。犬は首を折られ、蟷螂は眼を抉られ、百足は足を全部もぎ取られ、里の人間に詫びたのだ。
 そうせざるを得なかった彼女の姿は泣いていたようにも見えたし、笑っていたようにも見えた。
 
 「残念な、ことね」
 「あ・・・・・・ああっ・・・」
 「お空が気に病むことはないよ。悪いのは私・・・・・・忘れなさい。今日と彼らの事は」

 動物的本能がお空に訴える。
 忘れろ。その方が幸せで居られる。
 忘れろ。その方が自分のためだ。
 こいしの血でぬめった手がお空の頬に触れる。その手は優しかったが、その真っ直ぐな双眸がお空を無意識に脅えさせた。

 「空(モト)に戻したらいいの。難しいことじゃないでしょ?」

 お空は恐ろしいことを思った。
 こいしさまは、忘れなければ私も処分する。この人の形をした※※は、もしかしたら・・・最初から。
 その先は考えたくなかった。ペット(家族)ではなく・・・・・・最初から家畜を飼っているとしか思っていないのかもしれない、などと。
 いつしかの喋る牛の話を想像したが、この少女は喋る牛でもなんでも喰うときは喰う・・・そんな列記とした妖怪なのだ。
 
 「(ああ、食べてしまったの・・・・・・?)
 「その通りよ」
 
 “閉じていた”瞳が開いているようにみえる。
 
 「(どうしてですか?)」
 
 心の中で呟いた言葉にこいしが声を出して答えた。
 
 「お姉ちゃんに私が殺しをしていることを知られたくないの」

 もしかしてこいしさまはこういうことに慣れているのですか?

 「・・・・・・勿論。でもお姉ちゃんはそれを知らない。いいの、汚いことは全て私が引き受ける。お姉ちゃんはね、もう泣いちゃ駄目なんだ。
  お空の事は私も好き。だからね・・・」

 お空の意識はそこで途絶える。
 こいしによってその記憶は意識の彼方に飛ばされた。
 

 ※※※

 
 長い年月が経ち、ようやく飛ばされていた記憶を思い出す。
 封じられていた記憶。
 私が、誰にも迷惑をかけないように封じていた秘密。全ては、さとりさまとこいしさまの為。

 「――――――さとりさま、こいしさま」

 心の奥にずっとしまいこんでいた覚悟を究極のエネルギーが呼び起こしたのだ。
 扉は開かれる。
 空っぽになっていた器に水が注がれる。
 こいしの恐ろしさ、しかしながら姉を思う健気さ。ペットたちも殺したくて殺したわけではないし、今思うとあのとき彼女が笑っていたように見えた自分をとても恥ずかしく思う。
 なにも可笑しいことなんてないのだ。しかも自分の家族(ペット)を食ったなどと―――何故想像してしまったのか?
 狂っていることなど、なにもない。
 そんなことより私がやろう。
 さとりさまとこいしさまを幸せに出来るのは私なのだ。
 私がこいしさまの代わりにその役目を負おう。
 
 「(もうさとりさまもこいしさまも何もしなくていい。私が全てを代わりに行う)」

 その為には強くなくてはならない。
 証明しなくてはならない!
 先ずは目の前の吸血鬼を倒して、”こんなもの”の代わり程度は私が出来るということを証明しなくてはならない。

 「この力はその為に与えられた。スペル―――核熱、人工太陽の黒点」

 Spell Card!!! 核熱「人工太陽の黒点」

 太陽に向けた左の掌を発動したスペルカードもろとも強く握る。
 ホットジュピター落下モデルで人工太陽に落ちたフランドールを追撃する。
 唱えるは、人工太陽の中心部分のさらなる熱量増加。そして引力の追加。逃げようとするフランドールを更に中心に引き寄せるものだ。
 お空はハイテンションブレードの手ごたえは確かに感じたことで安心はしない。何せあのこいしさまが求める悪魔なのだから。
 こいしさまの横に使えるのは私が適任のはずだと信じて疑わないお空だったが、フランドールを決して見くびってはいけないと肝には命じていた。
 生来、妖怪になってからも吸血鬼という生き物に関わったことがないお空だが、仮にも鬼の名が付いている妖怪だ。脳裏に浮かべたのは地底を束ねるお山の大将。
 そこから大分弱く見積もったとしても・・・普通なら到底適う相手ではない。この力を以ってしてようやく互角。いやそれすら怪しい。
 完全に燃やし尽くす。灰になってこの目で確かめるまではやはり油断は出来ないと感じていた。

 「吸い込まれろ」

 強く、強く念じる。
 私が強くなれば、きっと二人は泣かない。笑ってくれる。悲しまない、喜んでくれる。
 手に入れた究極のエネルギーはそれを叶える為の力。
 これでこいしさまはさとりさまの為に殺さなくていい。そうなれば閉じた瞳が再び開かれ、さとりさまはきっと喜んでくれるだろう。
 そうお空は信じていた。

 あの夜、すでに手遅れだったのだ。
 欲望を抑え切れなかったペット達は、こいしさまが静止するよりも早く人間の赤ん坊を喰らっていた。しかも一人じゃない、その月に生まれた赤ん坊数十人を・・・。
 責任はそのペットの処分だけでは当然済まされず・・・・・・。
 程なくして、人間の妖怪狩りが始まった。赤ん坊の親達は狂い、その親戚たちや過去に同じ目にあったものなどが協賛し、その規模は少しずつだが大きくなった。
 責任はサトリ達だけではなく、山の妖怪達からも軽んじられていた妖怪も巻き込まれることとなる。
 人間と妖怪の境界ははっきりしている。夜に里より外に出たものが食い殺されたとしてもその者の責任になる。しかし、妖怪が夜に里に侵入し人間を喰らうのはタブーなのだ。
 理由は明らか―――人間は妖怪より弱く(一部例外を除く)、幻想郷においては絶対数が少ない生き物だからだ。だからこそ、巫女と境界の妖怪がその管理に携わり、わざわざ幻想郷にルールを敷いたのだ。
 その掟を破った者は追放。
 初めて掟を破ったからか、見せしめとしてその厳罰は大変に重く山の四天王の星熊勇儀とその一派もその責任を取らされることとなった。(実際は星熊勇儀が名乗り出たらしいが) 
 ついでとばかりに同じ妖怪からも忌み嫌われていた土蜘蛛や橋姫、幽霊船の妖怪、鵺などもろもろ地底に追放されることに決定された。
 当然不満はでる。そのはけ口は勿論サトリ姉妹に向った。
 その先はあえて語る必要はないだろう。
 
 お空はその責任は自分にもあると今でも思う。
 私がしっかりしていれば、こんな大事にはならなかった。
 地上の・・・・・・太陽をいっぱい浴びたあの森の隅っこで今でも誰にも嫌われること無くひっそりと姉妹は暮らしていけたのだ。


※※※


 そのお空の記憶が、フランドールに流れ込む。


 「カコヲキザムトケイ」

 Spell Card!!! 禁弾「過去を刻む時計」

 突如としてお空の回りに時計の針がいくつも現れる。人間一人分くらいの大きさはあるだろう時針、分針、秒針と思われるそれぞれ研ぎ澄まされた刃が宙で乱舞を始めた。
 全方位から迫り来る手裏剣弾のイメージだ。太陽光が針の部分を反射させる。とても鋭い残光・・・お空は一目で判断する。
 触れてはいけない、あの刃は・・・・・・とてもよく切れる。
 そう思った直後、一番近くで顕現した時計が制御棒の先端部分に触れ―― 

 「あぶなっ!」

 ―――る前にお空が制御棒を自分の頭上の方に引き上げて刃との接触をやりすごそうとする。
 が、避けたはずの制御棒が“何か“に接触する。

 「えっ?」

 さも最初からそこにあったかのように、頭上には時計の刃が居座っていた。
 いつの間に―――? 危うく頭上で舞っているそれに首を持っていかれそうになった事にお空は鳥肌を立てた。
 制御棒にはすでに刃が食い込んでいる。それでも首を失うくらいならと・・・・・・犠牲を覚悟する。
 
 Spell Break!! 光熱「ハイテンションブレード」

 制御棒が時計の刃によっていとも簡単に切断される。間違いなくフランドールの大技が発動していた。
 非常に鋭利な凶弾は強度の耐久を誇る制御棒ですら意に介せず、まるで鋏で紙を切るかのようにばっさりと切り裂いた。その光景を見たお空は再び鳥肌を立てざるを得なかった。
 時計は舞う。狂ったように舞う。お空は翼を羽ばたかせてすぐにその場を離脱すると太陽の中心部分から横へと急速旋回する。
 時計に意思があるかのように逃げるお空を追ってくる。否、時計に意思は無い。
 勿論、フランドールが操作しているのだ。

 「(誘導タイプ・・・?!)」

 ともすればこの光景をどこからか見ているはず。
 お空は360度目を配らせるが、どこにもその姿は見えない。
 よもや太陽の中からか? そう思いたくないがそう思わざるを得なかった。

 「うあっ!!」
 
 今度は、右の翼付近に時計が出現する。というよりかは、最初からその方向から迫っていたようにも感じる。 
 翼が少し持っていかれる。まずい。
 空中での戦闘に影響が出る。鳥の姿をした妖怪の翼は飾りではないのだ。

 「なによ、これは!!?」

 お空を囲うように徐々に、少しずつ少しずつ時計と時計の間隔が狭まっていく。
 だが、お空はその奇妙な違和感が気にかかって仕方がなかった。
 さっきからいくつもの時計を眼で追っていたが、避けた後・・・それは起こる。
 自身を狙った時計弾が軌道線上を通り避けようとした瞬間、いきなりもう一方から時計弾が迫ってきているのだ。あわててそれを避ける、というその作業をお空は先程から何度も繰り返していた。
 最初に制御棒を狙われたときもそうだ、お空からみて右下から迫ってきた時計を制御棒を頭上に掲げた。・・・そうしたら左上にいつの間にか別の時計があった。
 お空が上下左右見えていないわけではなく、全てを把握していても時計いきなり現れる。
 いくら鳥頭で気にならないからといっても、こう数回も続けばそれはさすがに疑問視しなければならなかった。

 「ぐっ・・・」

 お空は知らなかった、というより発動があったこと自体忘れているのだろうが・・・・・・これがカタディオプトリックというスペルの真骨頂であった。
 ようやくその事に考えがたどり着いたのはその攻防を数にして17回を超えたときだった。
 近づいてきた時計弾に一瞬反応が遅れ、右翼に針が接触する。被弾を免れずこれまでか、とお空も覚悟したが

 「へ・・・?」

 時計はお空をすり抜けて、何も無かったかのように軌道上を通り抜けていったのだ。
 
 「小癪なことを・・・」
 
 幽霊の正体見たり枯れ尾花。ようやく幻影だということが分かるとあきらかな苛立ちを含んだ声で言葉を吐く。
 それも仕方ないことだろう。お空はフランドールに力と力の勝負を求めていたのだから。
 吸血鬼と呼ばれる力の権化が、こんなまやかしの小細工に頼ろうとは。
 本物は一方だけ。
 ならば避けるのは困難ではない。いや、それすら最早面倒か。

 「(吹き飛ばす)」

 それにしても―――やはり太陽の中から操作しているのか? 
 でも・・・・・・それならば落下モデルと黒点による吸引でいまやフランドールは太陽の一番熱い部分・・・・・・中心に居るはずなのだ。
 いくら吸血鬼でも耐えれないだろう。

 「どうやって・・・・・・?」

 疑問に思うお空は時計弾をうまく避けながら、再度自分が作った人工太陽を見つめる。
 あの中にフランドールを叩き込んだ・・・・・・はず。疑問がお空のなかで渦巻く。そして、一つの結論にたどり着く。
 果たしてそれはフランドールだったのか?
 時計弾の片方が幻影で、それがまるで鏡のようになっていたこと。考えればそれは時計弾だけではない。今日の私は冴えているとお空自身も思う。

 「(もしかして、もしかして―――――)」

 もう太陽には目もくれずに上空を見渡す。どこだ? どこだ?

 「・・・!!」

 雲の奥、月明かりに照らされて・・・・・・フランドールの影が見える。あの歪な翼はいくらお空でも見忘れない。

 「注意したでしょ? まぁ撃つ方向っていうヒントだけじゃわからなかったかもしれないけど」
 「一体いつから―――?」
 「・・・・・・ハイテンションブレードで私を刺したときには」
 「――――刺した手ごたえはあったけど」
 「ええ、痛かったわ。蝙蝠一匹分焼け死んだわよ!」

 本当のフランドールは最初の攻防で吹き飛ばされた際に逆側に移動し、質量を持たせるためにわざと左肩の部分に蝙蝠を一匹当てに行かせた。
 そんな手間を掛けて作り出したのがこの空間だった。
 そしてその手間のおかげでお空は制御棒を失った。お空の大技はすべてあの制御棒で操作されていることを最初から知っていたからこその行動だ。
 お空の体のパーツはどれもこれも飾りではない。力の流れを感じるし一つ一つがきっと重要なものなのだろう。その中でも最も重要なのがあの制御棒。
 フランドールがレーヴァテインで最初に狙ったのもお空の体ではなくあの制御棒だ。元々フランドールはお空を殺す気はない。戦闘不能に陥ってくれさえすればなんでもよかった。
 おそらくこれでもうお空に残された手は少なく、放っておいても自滅する。フランドールはそう睨んでいた。

 「―――――――っ」
 
 完全に嵌められた。
 よもや、この吸血鬼が智謀で勝負を挑んでくるとは。
 考慮に入れるべきだった。吸血鬼が吸血鬼としての力を失っているのに意気揚々とここまで登ってきたその自信と理由を。
 フランドールは飛んで火に居る夏の虫ではないのだ。

 「そう、そんな技もあるのね・・・・・・さて・・・じゃあ次はどんな手品をみせてくれるのかしら?」
 「手品は終わり。あんたはここで落とす」

 ぐわんぐわんと空を切り裂く音を立て、過去を刻む時計がお空を襲う。
 元々バランスの悪い作りだが、制御棒の重みを半分失ったことで空中での帰航に支障が出ており、時計弾を避けるだけで精一杯。時計弾を狙って打ち落とすなんて芸当、今のお空には不可能だった。

 「(背に腹はなんとか・・・・・・っていったわね)」
 
 壊れた制御棒をこれ以上持っていても仕方が無いと判断しお空は右手の制御棒を解除する。

 Spell Break!! 焔星「十凶星」
 Spell Break!! 「ホットジュピター落下モデル」
 Spell Break!! 爆符「ペタフレア」

 「(自ら解除した・・・?)」

 バラバラになったパーツは重力にひかれ太陽の中に消えて行く。
 制御棒に宿らせていたいくつかのスペルはそれと同時に破壊される。背に腹は代えられない―――これで身が軽くなり、空での回避は自由となる。
 だが、そうなると早々に決着を付けなければならなかった。付けなければならない理由があった。
 
 「ああっ・・・・・・!」
 「すでにチェックメイトよ。素直に投了しないさい。あんた、制御棒を失ったら力を制御できないんでしょ?」
 「余計なお世話・・・・・・!! 」
 
 すぐに身体に痛みが伴う。体の芯が融解しそうなほどに熱い。
 お空の顔が頬が紅潮していく。燃料を操作している制御棒を失った今、制御不能となり核暴走するまでそれほど時間は無い。
 お空は調子に乗っていたが自制心はあり、決して狂喜乱舞していたわけではないのだ。
 戦う理由は在り、守りたい家族が在り、そしてそれを実現させるのが究極のエネルギーだと考えている。
 故に究極に身を任せ操りそこなうことは許されなかった。制御不能になるのは、そもそもの論外。だから制御不能になる前に決める。
 開放された右手がぎゅっと胸の赤い水晶を握り締めた。
 
 「(まだ“これ”がある。とっておきの一撃)」

 汗が止まらない。今の発汗量ならばきっとお空のほうが多いことだろう。汗の染みた衣服が少し重く感じた。
 対するフランドールは人工太陽からかなり距離をとったせいか涼しげな顔を見せていた。

 「わかった。命まではとらないわ。只、その両翼は落とさせてもらう」

 “過去を刻む時計”はフランドールにとってこの戦いにおける切り札だった。
 蜘蛛の繭から起きた瞬間に確かめると使えるスペルはすでに4枚しかなかったのだ。
 レーヴァテイン、カタディオプトリック、過去を刻む時計・・・そして。
 本来ならばカゴメカゴメ、恋の迷路、スターボウブレイクがあったのだが、その3枚はすっぽりと抜かれていた。理由は分かっていた。
 フランドールのフォーオブアカインド(分身)の仕業だ。レーヴァテインの炎も少し持って行かれはしたがかろうじてスペルとしては原型を留めていたのは不幸中の幸いだっただろう。
 
 「―――――」

 放った過去を刻む時計は相手を切り裂くだけのスペルではない。
 その正体は相手の記憶を自分にも見せる禁弾のスペルで興味を持った相手の過去と記憶を覗く性質の悪いものだった。
 昔に興味本位だけで作ったスペルだが、いかんせん凶悪だったため現在は保有さえしていたが使用はしていなかった。
 余談だが被害者の白黒の魔女は、このスペルのせいで乙女の恥じらいを曝け出し暫く自宅に引きこもったという。
 このスペルは正直フランドールも撃ちたくは無かった。他人の過去は決して簡単に暴いてよいものではない。たとえそれが倒すべき敵であっても。
 しかし、目の前に現れた敵には撃っても問題ないと自前の勘がいっていた。
 それでもレーヴァテインだけで終わらせれる相手ならと、思っていたが存外に厄介。
 ならばきっとこの相手はなにも見られて困るような過去などないと、そう思ったので躊躇なくこの凶悪なスペルを放ったのだった。
 凶悪なのは付属の能力だけでなく空間に現れる時計の刃は弾幕としても強力な部類に入り、威力は申し分なく、それなのにかなり遠くからでも操作ができた。
 その弾幕の部分、それだけでよかったのに。
 それなのに、思っても見なかったお空の記憶が自分に流れてきたのだ。そこには戸惑う自分が確かに居たことをフランドールは認識していた。 

 「負けないよ!! 私が守るの!!」
 「――――知らなかった」
 「え―――?」
 「嘗ては地上の妖怪と地底の妖怪は一緒に暮らしていたことも。
  幻想郷には暗黙の了解があるということも。
  こいしがだんだんとずれていったことも。
  そして、目の前の敵がとんでもなく馬鹿であるということも
  思えば確かに私はあんた達のことを何も知らなかった」
 「そうだ、何も知らないくせに・・・・・・差別されたさとりさまやこいしさまの気持ちが吸血鬼なんかにわかってたまるか!」
 「あんたはその気持ちを他人にぶつけてるだけよ!! ・・・・・・・・・くっだらない」
 
 誰もが程度の差はあれ闇を抱えているし、それを解決するのが人生だろう?
 悩み、悩み、悩み悩み悩み・・・・・・。ヒトも妖怪も悩んでいる。
 フランドールは思う。考えないことは無垢な事ではない。赤ん坊ならまだしもお前たちは何年生きている?
 それだけ長く生きて最終的に“何も考えないこと”に行き着いたのであれば・・・それは“悪”だ。
 何故ならフラドール自身もそうだったからだ。
 何も考えず壊した。潰した。奪った。喰らった。うっとおしいと思えばそれがなんだろうと破壊した。
 今のフランドールはそれが許せなかった。自己嫌悪とも言えるだろう。
 こいしも、空も・・・・・・一度は答えにたどり着いた。
 でもそこは終着点ではなく、通過点であった。そこには終着点を遮る大きな壁があり、彼女たちはそれに気付かずそれ以上の道は存在しない、ここが終着点であると思ってしまった。
 その終着点にたどり着き、彼女たちはそれが成すべき事と見誤ってしまった・・・。
 霊烏路空・・・・・・主人に従順でありすぎた為か、己の成すべき事が間違っていることにすら気付かない。
 
 「・・・・・・・・・教えてあげるわ」
 
 それが誰のためにもならないということを!
 空間が割れる。
 
 「あああああああああああああああああああっ!!!!!!!」
 
 Spell Card!!! 核熱「核反応制御不能」

 スペル発動と同時に――――今度はフランドールを衝撃が襲う。
 お空の叫び声が遅れてフランドールの耳に届き、そのときにはすでに時計弾の半数がガラスが割れるように砕け散っていた。
 
 Caution!! Caution!! Caution!! Caution!!
 
 Spell Break!! 禁弾「カタディオプトリック」


 「――――――ふん」
 
 ・・・・・・やってくれるとフランドールは鼻をならす。
 この結果を予想はしていなくもなかった。大した動揺があるわけではなく、フランドールは大きく深呼吸をした。
 カタディオプトリックが作り出した星空が消えると、残ったのは大きな太陽と半数に減った時計弾、そして2人の姿だった。
 
 「ハァハァ・・・・・・まやかしは消し飛んだわ。そろそろ正々堂々と勝負したら?」
 
 熱い身体を押さえつけながら、頭を冷静に保っていたのはお空にそれだけの精神力が備わっていたからだろう。だがその冷静さもいつまで保てるか。
 お互いに残された時間は少ない。外から灼かれるか、内から灼かれるかの違いだけである。
 ならばこれ以上のじゃれあいは不必要。そろそろ決着を付けようと、2人の目が合図を告げる。
 フランドールが右手をひねると周囲に散らばっていた時計弾、くるくると回転してた針がピタリと動きを止め、再びお空に狙いをつけた。

 「過去を刻む―――」
 「遅い!!!」

 融合の足と分解の足で大気を何重にも蹴り、お空はその場から飛翔した。時計が狙いをつけた場所には爆音だけが残る。

 「なんて離脱速度・・・・・・速い・・・っ!!」

 彗星が流れるが如く、されどその彗星は上空に。一気に大気圏までたどり着こうかというほどまでに上昇する。
 お空も只ではすまない。翼は引き千切れそうに痛いし、これほどの速さで移動した経験も無いから呼吸もおぼつかない。
 良いことは上空の冷気で体が少し冷えたことくらいか。
 それでも成さねば、フランドールを倒さなければさとりさまもこいしさまも認めてくれないからお空は飛ぶ。
 フランドールの目でもお空の姿が見えないくらいまで舞い上がると、ようやく推進力が限界に来たのか加速を失い停止した。
 お空が考えた技は単純明快だった。この高さから自らを弾丸として撃ちこむ渾身の突進技。それは振りかざされる神の一撃に匹敵するものだった。
 お空の身体は翼という名の鎧で覆われて一つの弾丸となり、落下を始める。
 ただ一つ問題だったのが、命中難。目標も見えないこの高さから、果たしてこの技を必中させることが可能なのだろうかという事。
 だがそれもすでに解消されていた。落下と同時にスペルを2つ発動させる。

 Caution!! Caution!! Caution!! Caution!!

 Spell Card!!! 核熱「核反応制御不能ダイブ」&核熱「人工太陽の黒点」

 「 ―――――吸引開始 」

 当たらないのならば、当たるように引き寄せればいい。
 放たれるは再び「人工太陽の黒点」。今度は自身を中心として引き寄せる。中心となるのはお空の胸の赤い水晶だ。
 フランドールもゆっくりと重力に逆らって体が持ち上がっていく。

 「えっ・・・ ・・・体が・・・」

 今度はフランドールも逃れることが出来ず、その身を引っ張られた。
 お空のスペルが発動したことは間違いない、このままではいけないと空中でもだえるが、意思に叶わず徐々に上へ上へと引き寄せられフランドールとお空はまるで磁石のS極とN極が引き合うように
接近をし始めた。空中で今度は下に向けて飛んだお空のスピードはフランドールの上るスピードとは比較にならなかったが。

 「核反応制御不能ダイブ!!!」 
 
 キュイイイインという耳を劈く高速音と共に―――――この夜、フランドールは誰よりも近くで流れる星を見ることとなった。
 
 「はぶっ――――」
 
 声ではない。体中の酸素が口から出たような音がし、お空の技がフランドールに直撃する。
 内臓が潰れ、肺が血が詰まる。声を上げることすら叶わず、フランドールはその黒い弾丸の落下を受けて墜落させられる。 
 フランドールはその技を喰らい、目を見開く。
 白黒の魔法使いがいつしか見せたブレイジングスターという技に酷似、いや超越していた。速度、威力共に人間が繰り出すそれとは比べ物に出来るはずもない。
 一つの妖怪が命を掛けて行う死のダイブ。一歩間違えば自身も地面に墜落し即死を免れないほどに危険な技。
 そんな危険を冒してまで行ったのは“この次の技”を避けられないようにする為だ。
 
 Spell Break!! 禁弾「過去を刻む時計」


 スペルが弾け飛び、周囲の時計弾は音も立てずに消え去った。
 フランドールはお空という弾丸に身体の色々な箇所を潰されながら地上に向けて落下する。

 「最後に、お礼だけは言ってあげる」
 「お・・・礼・・・・・・っ?!」
 「そう、貴方がこいしさまを目覚めさせてくれなければ私はずっと地下でくすぶっていた! それじゃあ駄目よねぇ?!!」
 「糞が・・・それでよかったのよ、あんたはこっちに来るべきじゃあなかった!!」
 「いいえ、私はこちらに来て正解だったと思う」
 「・・・・・・・・・どうして?」
 「貴方のおかげで私の核融合を操る程度の能力は今、完成を迎えるわ。完成した暁には地上を焼き払いもう一度地底の皆が住みやすい世界を作る!!
  そう、元はといえばこの里の人間達が悪い! そして次に山の妖怪たち! その次が―――」
 「ぷぷっ、くはは、ぷっははははははははは!!!」
 「可笑しいと思う? なら―――」

 痛みと落下し空気を切る音で遮られそうなものだが、その言葉はフランドールに届いていた。

 「そろそろ本気で来なさいってば、吸血鬼ィ!!」
 「ば~・・・・・・・・・~か・・・・・・」
 
 フランドールはまだ余力は残されているのか軽口を叩いた。とはいえ、本当は意識が重力に惹かれて落ちそうなのをごまかしていただけかもしれないが。
 余裕が無いのはお空も同じ。エネルギーを制御できるのはあと数分といったとこだ。

 「出力、100パアアアアアァセントオオオオオ!!!!」


フランドールVS空


 速度が加速し―――――フランドールの体が下の態勢のまま、地上へと激突する。
 ドン!!!! というとんでもない落下音がする。周りに人が居たのなら隕石でも落ちてきたかと思うくらいの衝撃だ。
 地面に衝撃が走り、周囲に砂塵が舞い散り、背中から落ちたフランドールの背骨やあばらからバキバキと、骨の芯まで砕けたような音が響く。
 たまらず口から吹き出した血液がお空の翼を汚すがそんな事には気にとめず、全力の力を込めてフランドールの身体を下敷きにし、そのスピードのまま100メートルほど地面を引き摺った。
 風圧を受けて、歴史食いの影響が及んでいない民家や木などが風圧だけで薙ぎ倒される。
 ズザザザザと、まるで雑巾で床を拭くかのように引き摺られたフランドールの意識は、それでも未だに飛んでいなかった。
 身体は動かせない、それでもしっかりとした意識がそこにはあった。
 引き摺っているスピードが緩んでくると、お空はフランドールの身体を離し再び空中へと飛び立った。
 
 「(ようやく攻撃が終わった・・・? よし、反撃をしよう。今ならお空は背中を向けている。ああ、アホウドリが、隙だらけじゃない・・・)」

 されど、身体は骨折や出血で動かず意識だけがまるで勝手に浮遊する。
 フランドールの意識は飛んでいなかったが、気持ちはまだ宙に浮いたままで起き上がるまでにしばらくの時間が必要だった。
 お空はそれだけの手ごたえを感じ、最後の追撃の為へと高速音と共に天へと舞い戻る。
 綺麗なUの字を描き、もう一度太陽の上空へと向っていた。その後姿を見ながらフランドールもついに覚悟を決めた。
 
 それは神が作りし、究極の火の技の極意。
 国を一瞬で滅ぼすほどの悪意の炎。
 されど、それは未来へと受け継がれるエネルギー。
 全ては欲するものが望むがままになる、究極の力。

 「いくよ、フランドール」

 フランドールから見て人工太陽の裏側、つまり上空に到達したお空は左手を天に翳し人差し指を突き立てた。


うつほ



 「ラアアアアァァストオオオオオオオオォ、スペルーーーーーーーーーーーーーゥ!!!!」

 Caution!! Caution!! Caution!! Caution!!

 「サブタレイニアンサン!!!!」

 Last Spell!!! 「サブタレイニアンサン」
 
 極小の太陽がお空の人差し指の上に出来上がる。その太陽はお空がこれまでに放った弾の中で一番小粒のものだ。
 だが、威力はこれまでのものとは比較にならないくらいに大きく、大きく爆発する。きっとこれが落ちれば歴史食いも破られ里は壊滅状態となるだろう。
 お空にもそれくらいは予想できた――――それでも、もう止めることはしなかった。すでに彼女の頭はすでに沸騰し、乾き始めていたのだから。
 そうして極小の太陽はまず、巨大な人工太陽に墜とされた。人工太陽の内部で新たな核融合を引き起こしながら、ゆっくりと人工太陽は地上へと進み始める。
 翼を羽ばたかせる力をわずかほど残してラストスペルを放ったお空は意識を朦朧とさせながらその墜ち行く太陽を満足げに見送る。せめて地上で爆発する光景は見届けないと、と。

 「さぁ、フラン・・・どうする? 避けたら里が助からないよ・・・ひひっ」
 
 そう言ったのは観客であるこいしだ。
 その口調はまるで自分だけどこか別の場所から見ているような感じのものだったが、こいしも確実に巻き込まれる範囲に居た。
 それでもまるで逃げる様子すらみせないのはそれだけの自信があるからだろう。自分と、そして・・・・・・フランドールに。

 お空は馬鹿だ。それ故に理性を取り除き、ルールに縛られない予測不能な行動をとる。
 自分が思うのもなんだが、ひどく不安定だなとフランドールは思った。
 太陽が迫る。

 「誰も住めない・・・・・・そんな汚れた炎で焼き払われた大地なんかに」
 
 
 まだ羽は動くし、ぼろぼろになった背骨なども少しだけ元に戻っていた。こうなればあの一撃を避けることは・・・なんとかといったところだができる。
 しかし―――――――フランドールの頭は避けることなど全く考えの外に置いていた。
 ここには守るべきものが居るからとか、人間を助けたいとかそんなお空とこいしが考えていた理由ではなかった。そんな理由は博麗の巫女に任せればいい。 
 フランドールが思っていたのはそういうことではなく
 
 “あいつ、後悔するな”

 その一つのことだった。
 一度破壊したものは決して元には戻らないという真実。
 フランドールとお空の性質が似通っていたからか、なおさらフランドールはその事をお空に伝えたかった。
 きっとまだ無垢なままなのだ。きっと先日までは鶯を口に放り込む程度の食物連鎖による殺生しかしたことがなかったというのに。
 それなのに、あれだけの力を突如持たされて平気でいられる訳もない。きっとまだ本気でなにかを壊したことも殺したことも無いだろう。
 フランドールには剣を交えた瞬間に分かってしまっていた。こいつは理解をせず壊しているということ。意味もなく殺そうとしているということ。
 だから何度も彼女は馬鹿だとフランドールは罵った。
 やってしまった後では取り返しがつかない。そしてきっと悔やむだろう。なんてことをしてしまったのだと―――――そう、以前のフランドールのように。
 お空はまさに今、それを実行しようとしている。それも、あろうことかこのフランドールの前で。
 狂気に狂わされた者の末路なんかろくでもないものに決まっている。そんなものは、見たくはなかった。
 そういう考えがあったからこそフランドールはここを動けなかった・・・・・・否、動かなかった。
 太陽はそんな彼女の意思とは関係なく無慈悲にも墜ちようとしていた。

 「・・・・・・第十三回吸血鬼講座、“力を使う者はその意味を知りましょう”  ・・・お姉さまの・・・・・・いえパチェの受け売りだけどね」
  
 仰向けに寝そべったままでフランドールはその光景を見ると、あきらめたかのような表情をし、取り出すはずの予定の無かった最後の1枚を取り出した。

 禁忌開封。Q.E.D.
 それは悪魔自身が封印した過去の波紋。
 495年の時を生きてきた存在の証明。
 証明を終了したときに出来た、偶然の産物。
 その波紋こそ、吸血鬼フランドールがありとあらゆるものを破壊する程度の能力を行使すると呼ばれる所以である。

 お空が神の力を結集させ、究極のエネルギーの塊となったのがあの一撃。
 だけど、果たして・・・神が解き放った究極の一撃は・・・・・・このスペルに耐え切ることができるのかしら―――――? 
 私の存在を懸けた・・・・・・吸血鬼が放つ最狂の一撃に――――!


 “さぁ、試してみましょうか”



 「―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――ラスト、スペル」
 
  
 

 続く




コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する

管理者にだけ表示を許可する
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック
copyright © 2004-2005 Powered By FC2ブログ allrights reserved.
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。