FC2ブログ
人生を全て捨て効果発動☆
19話あげました。これで次回からようやくこいし戦です。
201811<<12345678910111213141516171819202122232425262728293031>>201901
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
フランドール・スカーレットVS古明地こいし 16 斯くも大きな太陽が昇る②
斯くも大きな太陽が昇る②

 ゆらゆらと揺らめく獄炎は地獄の人工太陽の炎そのものだ。その頭上ではレーヴァテインと制御棒が数回音を立てて交じり合っていた。
 鉄の音ではなく、爆音めいた音のする鍔迫り合いの後、2人は一旦距離をとりその地獄の炎の中で対峙する。
 じわ……と、背中に汗をかくのは地の利に弱いフランドールの方だった。

 「太陽の真下で戦う吸血鬼……あまり聞いたことは無いわ」
 「うるさいなぁ、月もでてるじゃない」

月も出ているが人工太陽の輝きの前では遠くの月の光など微々たるものだ。

 「吸血鬼はお月さまが好きなの? 変な話ね……」
 「あん?」
 「知ってる? 月の光は太陽の光が反射して夜を照らしているのよ! 太陽の光に弱い吸血鬼が月の光で元気になるわけ無いじゃん」
 「……成程、それは一理あるわね」
 
 お空が作った人工太陽は直径200メートルはある極大サイズの物だ。これはまさに私と戦うために作ったリングだった。
 これを太陽と呼ぶにはしょぼい代物だが、確かに―――地上に注ぐ月の灯かりを消すには十分すぎる熱量と光量だ。

 「最初から………仕掛けられてたってわけ?」
 「………あ?」
 「あんたは何も聞いてないのね」
 
 そこまで賢くない彼女だ。きっと入れ知恵をしたものがいるであろうことは予想はしていた。
 だが、そのベクトルが私に向かうであるということまでは仕掛けた彼女も予想していたのだろうか? いや、そこまで暴走するということは予想できなかっ
たのではないだろうか。
 だが、それは彼女にとって都合の良い展開だ。お空がフランドールに興味を示したのは同じ破壊を極めし者だからか―――
 
 「そういや、なんでこっちに出てきた?」
 「……教えてあげますわ。焦土灼熱……そんな地底の地獄を地上で顕現する為よ!!!」
 「本当に……馬鹿なのか…?」
 
 その言葉からは怒りを通り越して、呆れを通り越して、もう一度怒りが湧いてくる。
 空はその言葉のニュアンスも彼女の表情からもおそらくは察することはできてはいないだろう。気分高揚が最高潮に達していた。
 そんなつまらない話をしている間も太陽がフランドールの肌を少しずつ灼いていく。

 「(語り合うことは不可、か)」
 
 この戦い、フランドールにとってとてつもなく不利な戦いであることは彼女自身が一番良く分かっている。勿論本当はこうして話している時間の分だけ人
工太陽によって体力が削られていくのだ。まぁ本当の太陽の下であったら今の彼女ならば数分と持たないだろうから人工である事は幸いなのかもしれないが。
 始まってしまった死合ではあるが、もしくはお燐のようにこちらサイドに戻ってきてくれるかもしれないと話をしようと考えるが……
 
 「ジリジリと丸焼きにしていくのも悪くはないけれど……そろそろ始めようか」 
 
 どうやらあちらは依然臨戦状態だ。

 「後悔しないことね。前回みたいに私も手加減できないから―――」
 「ハハハッ! しなくていい、しなくていいよ! だって負けたとき言い訳、できないでしょう……!
  それとも………」
 
 「あの世で言い訳でもする?」
 
 プチッ……。切れてはいけない血管が切れた音がする。
 ……いけないいけない。アホウドリに煽られてどうする。
 
 「……スペルカード」
  
 片手で構えたレーヴァテインが威嚇するように燃え上がる。一方で左手は新たな戦術を顕現しようとしている。
 私はお空と同じで戦闘面で浅い部分はあるが、馬鹿ではない。私は人間を見てきたのだ。力が足りないとき人間ならどうしていたか、絶対に覆らないほどの
力量差を人間によってひっくり返された事も体験済みだ。そういう勝負の仕方もこの世にあることが知れてよかったし、ようやく生かすことが出来る初めての
実戦の場がやって来たのだ。
 
 「(アイツがこの2枚のスペルに乗ってこなければおそらく私の負け……)」

 フランドールはどこからともなく1枚のスペルカードを取り出す。こいしとの連戦で補充が追いついてなく彼女の実質現在使えるスペルはたったの4枚となっていた。4枚のカードの内、この戦いで使えるのは実質3枚。
 1枚目はレーヴァテイン。戦いの要となるのは2枚目と3枚目。
 2枚目に選択したスペル――――― それは軽く頭上に放り投げた夜空に煌く万華鏡。
 
 「カタディオプトリック」

 Spell Card!!! 「カタディオプトリック」

 「なに……?」
 「注意しなよ。これから先、特に撃つ方向にはね―――」

 人工太陽を覆うように夜空に煌きが描かれる。お空は鴉だからかキラキラと光るものに興味を示した。
 
 「キラキラして綺麗だね。まるで星の砂を空に撒いたみたい」
 「洒落た表現するじゃない」
 「ふふっ……何のスペルか知らないけど、押し通させてもらうわ!!」

 カチャリと銃を構えるように制御棒でフランドールを狙う。

 「(その程度は、無視するってわけね)」
 
 狙われたフランドールも冷静だ。あの溜め方ならばまた大技だろう。ならば見切るのも避けるのも容易い。前回から進歩したのはこの大きい人工太陽だけ
かとガクリと肩を落とす。これならば人間でもお空に勝つことは難しくないだろう。
 
 「私が使うのは大技ばかりでキレが無い―――そう思ってるんでしょ?」
 「……ん、分かってるじゃん」
 「前回、貴方が私の十凶星に対して放った技、たしかフォービドゥンフルーツ……アレは非常に勉強になったわ」

 フランドールに向けていた制御棒を天に向けるとお空は1つの弾を作り始める。ブォンブォンと機械音が鳴り響く。制御棒の先には黒い、そうフォービゥ
ンフルーツと同じような弾が完成されていた。―――――収縮貫通弾。
 一点撃破の魔弾。まさかそれをお空が使えるわけが――
 
 「エネルギーを凝縮させて……放つ!!!」
 「(私の真似を………いや、これはっ)」

 凝縮させたエネルギーの弾は膨らみをもち、内側から外に押し出されるようにして中心弾から小さな弾が外部に放たれる。 

 「(―――ッ!! 速―――)」

 その初弾、フランドールは反射神経で避ける。

 「ふっ……」

 それは今までお空が繰り出してきた弾幕とは一線を画す速さの弾幕だった。
 見切れぬほどの速い弾、そしてそれはフランドールのフォービドゥンを一回り小さくし尚且つ貫通力を上げている。なにより―――

 「まとめていくよっ!」
 「(数が多いっ!! 捌ききれない!!)」 
 
 自機狙いの集中弾は、起動を見極め直前で左右に避けるのが定石。だが、この弾幕はそれに足して直前で、不定期にもう一度爆発した。
 1つの弾が放たれ、ある距離を飛んでから空中で前方に向けて3~5つくらいの弾に弾け飛ぶ。
 フランドールはこの弾に炸裂弾のような爆風効果と破片効果があるということをすぐに理解すると、避けるだけでは不可能とグレイズを諦めた。
 
 「(いい通常弾を使うわね)」
 
 レーヴァテインを駆使し右、左、上、次はレーヴァテインで4発落とす。やばい、羽をかすった。……問題ない。
 持ち前の小柄で柔軟な身体を動かし、空中で旋回しながらその弾幕の中を掻い潜る。だが、弾の数が多くフランドールの柔肌に少しずつ傷がついていく。
核のエネルギーを帯びた弾が放たれているのだ。かすっただけでもいつものようにほぼ無傷というわけにはいかない。

 「以前のようにスペルの破壊の目を掴んで潰す能力を使えないみたいね。そこまで力が衰えたのは残念だけど―――密度を上げるよ、フランドール……!!」
 「ハッ!! 続けてみなよ!!」
 「言うとおりにしてあげる!!」

 空の制御棒からさらに音が鳴り響く。

 Caution!! Caution!! Caution!! Caution!!

 連射速度がさらに上がる。フランドールは人工太陽の上面を飛び回り放たれる弾を捌きつつお空に接近を試みる。が、弾幕は厚い。レーヴァテインの一振
りではあの弾幕を全て落としお空に近づくことは不可能だ。一の太刀を振り終え二の太刀を振るう前にあの連射貫通弾が彼女の身体を串刺しにする。
 完全な夜ならば別にそれでも大丈夫だ。だがこの人工太陽の近くで蝙蝠化するのは―――ヤバイ。きっと再び再構築するのに時間がかかるし、待ってましたとばか
りに細分化された身体をあの巨大な玉で焼かれる可能性もある。
 ならばやはり今は耐え切るしかない。
 それにしても、私のフォービドゥンフルーツを一度見ただけであそこまで……?
 馬鹿と天才は紙一重というけれど………まさか。
 
 「どうしたの!!? 威勢が良かったのは最初だけじゃない!! 前のときのように私を圧倒させてみせてよ!!」
 「ちっ……楽しいヤツね」
 「フランドール、先に言っておくわ。このスペルに制限時間はない!  故に避け続けスペルブレイクするということはないよ!
  この人工太陽、貴方はハリボテだと思っているみたいだけど、この人工太陽こそが私のエネルギー源! 私の大きなもう一つの補給源なの!!」
 
 お空は堂々と自分の弱点を宣言する。それは彼女が馬鹿だからというだけではなく、それだけ自信があるから言える事だった。
 先のやり取りで、もはやフランドールにありとあらゆる物を壊す程度の力が失われていることを確信していたのだ。

 「そらそらそらぁ!!! 逃げてばかりじゃなくてさぁ! もっと撃ってきなさいよ!!」
 「(それができたら苦労してないんだよォ、バカ……!)」
 
 お空はそれがどれほど自分に有利なことか気付いていなかった。
 空中戦において、上空を取る。それは非常に有利な手であることに異論は無いだろう。
 但し、それはあくまで“通常”の空中戦に限る――つまりはこの障害物がある限り、通常の空中戦の有利がフランドールには訪れなかった。
 
 「(太陽を背負って戦うか―――)」 

 太陽を背に、否、正確には下に。
 地面は灼け焦げる大地、それを背負いながら戦うという有利は上空を取らざるを得なかったフランドールに対して大変に効果的であった。
 最もお空にとってそれは予期せぬ効果。エネルギーの補充以外に使う用途が無いと思われるこんな代物が敵の目を眩ませるほどに役に立ってくれたのは嬉
しい誤算だっただろう。
 
 「(眩しすぎて、的に当てることが出来ないなんて)」
 
 フランドールは心の中で悪態を付きながらも、勝機を全く逃していなかった。お空がこんな弾幕を放ってきた事と、地上の太陽は予想外だったが、それは大
きくて遅いか小さくて速いか、そして弾幕戦になるか、格闘戦になるかの違いだけ。まだまだお空はフランドールの掌の中で遊ばれているに過ぎないのだ。

 「ハッ!!」
 
 
 勢いよく、しかし大振りには振らずレーヴァテインで弾幕を捌く。カン! と良い音がし弾はどこかへとんでいく。野球で言えばホームランだろう。
 その弾は闇に吸い込まれ、遠くの方で“もう一度”カン! と鳴り響く。お空にとって最初の被弾はそのすぐ後に起った。

 「ッ!!」

 痛みを自覚し、お空は思わず声をあげる。

 「痛い…なに……?」

 このタイミングをフランドールは逃さない。
 一瞬彼女から放たれる弾幕が弱まるとレーヴァテインを振り回しフランドールは彼女に向って特攻をした。
 
 「たぁあああああ!!!」

 今ならいけると判断する。予想以上にお空の防御は甘い―――彼女は打たれ弱いのだ。
 一振りで弾幕を何十発も切り落とす。次に来る第二派も弱まったせいか発射が遅い。
 何故か自分の撃った弾があらぬ方向から主人めがけて飛んでくるのだ。レーヴァテインで打ち返したらあらぬ方向などからは帰ってこない。
 間違いなく動揺している。
 そう思い特攻を仕掛け踏み込むが―――――お空がそれに動揺したのはそのひとときの事だけだった。
 馬鹿だから考えない。疑問に思わないし、弾がどこから飛んできたなど追求もしない。彼女の悪いところであり、今においては良い部分であった。
 お空が迎撃態勢に入る。彼女がするのは目の前の敵を斃すことだけ。多少被弾しようが、スペルが切れようが、そんなことは二の次だった。
 そんなものはこの突撃してくる敵をなんとかすれば何とかなるだけのことだから。
 
 「(思ったより立て直しが早い―――か?)」
 
 1秒という時間の中で思い描く。
 踏み込みさえすれば私の勝ちだろう。お空のあの大技、ついでに今の通常弾であっても至近距離ならばきっと外す。
 さっきから空中を動かずに弾を放っていることからして、おそらく狙うという行為が苦手なのだろうことは明らかだ。
 きっと命中を上げるためであろうお空の十八番は総じて愚鈍で大きすぎる。本来彼女のその能力が発揮されるのは対軍、対城のときだ。
 そのことを理解しているのだろうか?
 いや、それは理解しているだろう。そのための先の通常弾だ。
 だが――――今はそれしかない。

 「(これで決まり。カタディで不意打ちを得られたのはよかった。……こんな使い方をする為に放ったものではなかったけれど。)」
 
 ―――ボッボッボッ
 
 「(――えっ?)」
 
 空を切る音に拒まれてはいたが、その音は確かに聞こえた。
 何の音―――?

 「―――――」

 お空が笑う。彼女のスペルを否定し、まもなく叩き斬られようとしているのに彼女は笑う。

 「なに――?!」

 制御棒をまるで刀か何かのように構える。素人同然の構え、しかしながら威力は刀のそれとは比較にならない。
 あるのだ。
 お空にも接近技が。

 「前も踏み込まれたわよね。でもね今回は―――あるよ。私も……“勉強”させてもらったからね」

 Spell Card!!! 光熱「ハイテンションブレード」

 予想は二度、裏切られる。
 右手の制御棒の先端から突如伸び出たその灼熱の剣は、フランドールのレーヴァテインと重なり合い―――蒸発する。
 骨にまで響く質量感―――カウンターを浴びせられた。

 「う、ぐっ!!危っ……」
 「スペル、ハイテンションブレーーーードォオオオ!!」
 
 お互いの剣が灼ける。
 灼熱と業火のぶつかり合い。無いと思っていたお空の接近戦スペルに驚くが、それでも一歩も下がることなく勢いに任せて踏み込んだ。
 いや、正確には止まれなかった―――というのが正しかった。
 上空からの全力突撃、いくら相手がここで予想外の技を出してきたからといって踏みとどまるなんてものは持っての外。それこそいい的になるだけだ。

 「(ええい、突っ込む!!)」 

 選択は間違ってはいなかった。
 お空は人工太陽の上でとはいえ、空中で翼を羽ばたかせ静止して弾を打ち出すのに対し、フランドールは空中を飛び回る。勿論、お空より“上空”をだ。
 きっと地底の者は地底に住んでいるが為に知らないのであろう。
 弾幕ごっこでも、本気の戦いでも空中戦というものは相手より常に上空を制することが勝利への鍵となる。特に接近戦ならなおさら―――
 準空中戦といえる現状況であっても同じことが言えた。 
 踏ん張りが利かない空中戦では、上空からの落下速度があるというのは何よりの強み。一見関係ないと思われる弾幕も、重力に逆らい上に撃ち込むのと、重
力を乗せて下に打ち込むのでは威力には多少の差が出る。勿論狙いを定めるのも上から下のほうが良いだろう。地上戦で無い限り、上からならば全てが把握で
きるのだから。
 例え太陽を背に背負うのだとしても、それは下ではなく上を選択すべきなのだ。故にお空が人工太陽の下ではなく、上をバトルステージに選んだのは手落ち
と言えた。
 翼をはばたき空中に立っていたお空はレーヴァテイン上空からの縦一線をハイテンションブレードで受け止めようにも、その両翼ではそこまでの踏ん張りが
利かない。
 だからこそ受け流すことも可能であったが、お空もフランドールも剣の技術に秀でているわけでもなく、受け流しやフェイクなどといったものは存在しなかった。
これがまた違う相手だったのならば彼女の愚直なまでの撃剣は軽く捌かれたであろうが、相手はアホウドリ―――
 その単純明快さからか、状況は上空を制したフランドールの優勢であった。 

 「驚きだわ! 空を羽ばたく鳥が、空で遊ぶ方法も知らなかったなんてね!」
 「なによぉ、蝙蝠風情が!!」
 「さらに上を見て見なさい! 月が私を照らしているの」
 「ぅ……」
 「あんたはやはり上を取るべきではなかった。……これじゃあ太陽の恩恵を100%は得られない」
 
 相手の推進力が低下してきているのは明らかだった。このまま押し切り、彼女自身を人工太陽にぶつける。
 いくらこれを作った本人であっても火傷程度はするであろう。いや、あって欲しい。そう願いながらありったけの力をレーヴァテインに籠める。
 拮抗していた力が次第に一方へと傾き――――――空中浮遊が揺らぐ。

 「(いける―――!)」
 
 そう確信する。
 お互い一切引かぬ攻撃姿勢。前進あるのみという勢いだ。
 お空に何かこれ以上の策があるのだろうか? いや無い、絶対に無いと確信していた。だからこその突撃だ。

 「はあああああああああっ!!」
 「――――っ!!」
 
 次第にお空の表情が苦くなっていく。火花散るその状況下で、それを確かめたフランドールはついに押し切ろうと全力の体重をかけた。
 レーヴァテインは紛れも無く業物。それを悪魔の妹であるフランドールが振り回すのだ。間違いなく、その火力の出力は最大級だった。
 しかし、お空の苦い顔は次の瞬間笑みへと変わる。
 ―――まるでそうする事を待っていたかのように。
 
 「ふふふ、飽きてしまったわ。
  そろそろ、遊びはこの辺でいいかしら――?」
 「なに……?」
 
 ドン、とお空の足元から爆音が響く。
 フランドールの全力を身を持って確かめたお空は、右足のパーツを爆発させ、大気を―――蹴る。

 Spell Card!!! 地熱「核ブレイズゲイザー」
 
 「核ブレイズゲイザーーーーー!!!」
 「バカなっ――押し返される―――ッ?!!」



フランVSうつほ2

 

 足元で小さな核爆弾が一個弾けるその威力は、単純に落下してきた威力以上のものということを示していた。
 レーヴァテインもろとも大きく跳ね飛ばされたフランドールは信じられないといった表情だ。
 もちろんそうであろう。如何に力が落ちようと今のは必殺の域に達する技だ。それを侮っていた相手が―――――返したのだ。
 今度はフランドールが苦虫を潰す番となった。

 「出力、70%……!!」
 「今ので―――7割ですって……?」
 
 ―――こともあろうに。
 吸血鬼を捕まえて力試しなどという者がいようとは。
 
 「―――どうやら只の馬鹿じゃなくて、力の強い馬鹿みたいね」
 
 神の火。例え使用者が未熟であれど、無知であれどそれはまさしく全てを焼き尽くす究極の炎であった。
 そしてその炎は未熟さをリアルタイムで成長させていた。
 フォービドゥンフルーツの真似事、いや改造技。前回は持っていなかったと思われる接近技。大気を小規模な核爆発で蹴り速力と馬力をあげる技術。
 ――――それらすべてを支える最大規模の人工太陽。
 間違いない………敵はとんでもない速度で追いつこうとしているのだ。仮にも495年生きた、吸血鬼の末裔に。
 アホウドリ………? 本当にそんなこと言っている場合か……?
 
 「火力を上げるよ、フランドール」
 「まさか、手加減されていたなんてね―――舐められたものね」
 「ふんっ!!」

 ようやく静止を決め込んでいたお空が動く。
 自信がついたからだ。今の攻防で。
 ボッボッボッ、古い石油式ストーブが火を吹かすような音が制御棒から鳴ると、下から上へハイテンションブレードが振り上げられた。

 「出力、80%…!」
 
 曲線状の禍々しい炎がレーヴァテインとするのならば、ハイテンションブレードはその逆。
 真直線に描かれるハイテンションブレードの炎のリーチは、曲線の持つ避けにくさを失った代わりに、レーヴァテインのリーチを遥かに凌いでいた。
 その間合い、レーヴァテイン5本分――――――――距離にして約25メートル。
 
 「ハイテンションブレード!!」
 
 火力と火力の出力勝負、だが、ついにレーヴァテインの炎がハイテンションブレードの炎によってその一部が掻き消される。
  
 「がっ………」
 
 捌ききれない高温の熱剣を寸前で避け、掠める。それでもフランドールの横腹の肉は焦げ、爛れる。
 肉の焦げ付く臭いを気にしている暇も無い。
 息もつかせぬ上段、下段の斬撃によってこれ以上間合いに踏み込むことすら許されない。お空は片腕でぶんぶんとしているように見えるが、実にその通りだ。
 あの剣に質量は無い。私の勘が正しければバーナーなのだ……あれは。おそらく先程、レーヴァテインの質量を受け止めたのは先端の芯の入っている部分だ。
 おそらく3メートルほどで、その先の部分の刃に重さは無く、故にレーヴァテインでも受け止められない。受け止めようものなら、きっと相手の刃は私の刃を透過する。
 だからいとも簡単にあのひ弱そうな筋力で振ることができ、また振り切ることも無いのだ。
 
 「ええいっ…!」

 うっとおしい。うっとおしいけど、認めるしかない。
 これが核の力。これが新しい未来の戦い方なのか。
 古臭い妖怪の叡智を捨て、外の新しい科学が作り出した究極の力だというのだろうか? 感心する暇は無かった。
 
 「ちっ」
 
 すでに上空は制していない。敵と私は一直線上でやりあっていた。
 出力ですでに差が出始めて今では受け止め止めることさえできず避けるしかなった。
 圧倒的―――――。まさに圧倒的な力だった。
 いずれ幻想郷にもこれほどまでの力が横行する日がやってくるのだろう。
 ―――彼女はきっとその先駆者。
 
 「力の収縮、コントロール!!」
 「!」
 「放出の具合、戦闘戦術!!」
 「この短期間で覚えたって言うの?!」 

 ハイテンションブレードの間合いから後退し、一旦抜ける。あの長いリーチは振り下ろしは速いが、リーチ外へ逃れる獲物をそれ以上のスピードで追えるか
と尋ねられるとそうではないと思う。あれはブレードであってスピアーではないのだ。所詮は剣の領域を出ることは無い。
 
 「脳あるカラスは爪を隠す――――ってね」
 「へぇ……鳥頭がぁ……一丁前にことわざを歌うなんてね」
 「改めて言うわ!!」
 「(大振りが来る!!)」
 
 直感だった。両刃の熱が更に増す―――上空の本来冷えた大気を加熱させる、
 振り上げられたその両刃の刃は首を落とすギロチンのようにも思えた。
 それを避ければ、いくら質量がなくとももう一度振り上げるには少しだけ時間がかかる。
 質量がないということは、手ごたえもあまりないはず。当たったかどうかを確かめるためには肉眼で把握する以外は無い。
 その為に必ず振り切るはず。
 
 「(大振りを空振りさせてもう一度踏み込む―――!)」
 
 すでにレーヴァテインの半分がハイテンションブレードに削り取られ受け止める余力は無い。
 振り下ろされた剣を見てから、ここでフランドールは一歩半ほど後退する。
 それはとても正確な判断だったが、その事が彼女を窮地に落としいれる。後退する―――それは攻撃してくる意思を割くと思わせる行為。
 ――――瞬間、お空にとってそれは弱体化した餌のように見えた。
 振り下ろされた剣がフランドールとお空を一直線で結ぶ線になるように空中でピタリと止まった。
 こんなにも熱いのに、背筋が凍る。

 「え!!」
 
 後ろに逃げることを予想していたかのように、一閃を振り切らず止まった剣は今度は槍となってフランドールを襲う。
 ―――――線は点になる。剣の域を超え。
  
 「ハイテンションブレード―――――『ホットジュピター落下モデル』」

 本来それは上空から木星ほどの大きく熱い弾幕を叩き落し敵を圧殺するスペル。
 だが、今回のこのステージでは意味が違っていた。
 木星を相手に落とすのではない。相手を木星に落下させる技――――星は上から降ってくるという概念を打ち破る攻撃方法。
 太陽に叩き落すこの技が何故ホットジュピターなのかは疑問符がつくところが、真実は木星も太陽もお空にとって区別できかねるというところだろう。
 要は大きくて熱ければいいのだ。    

 「私はああああ鳥頭じゃああああ………」
 
 踏み入れれば刃で焦げ、後退すれば槍で貫かれ。さすれどレーヴァテインで受け止める選択肢が無いフランドールは後退するしかなかった。

 「(くそっ、踏み込めない)」

 お空の眼が再び獣の目に変わる。
 熊が逃げる人間を追いかけるように、お空もまた動物的本能に従ってそれを追いかけ――――
 ドン、という本日2回目の爆発音がフランドールの耳に届く頃には、その推進力を以ってお空は突撃した。
 
 「!!」
  
 Spell Break!! 禁忌「レーヴァテイン」

 「なあああああああああああああいっ!!!!!!」
 
 驚いたフランドールはレーヴァテインを盾にするが、点の攻撃の威力はそれを遥かに上回った。質量をもった3メートルの部分がフランドール左肩を貫く。
 お空は止まらずそのままその推進力を以って自分の身体を軸に一回転させ、人工太陽向けてぶん投げた。



続く


コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する

管理者にだけ表示を許可する
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック
copyright © 2004-2005 Powered By FC2ブログ allrights reserved.
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。