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人生を全て捨て効果発動☆
19話あげました。これで次回からようやくこいし戦です。
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フランドール・スカーレットVS古明地こいし 14 黄金の華の秘密-Subterranean Rose- ④
黄金の華の秘密-Subterranean Rose-④

 暗い道を飛んでいたヤマメの目に明るい光が差し込んだ。ようやく地上へ到達したのだ。
 地霊殿から地上までは休憩を挟みながらで1日かかる。その間ヤマメは飛びっぱなしだが、妖怪であるヤマメはその程度の事で疲れたりはしない。
 
 「(もうすぐ地上か)」

 ヤマメは地底の妖怪だ。紅魔館にフランドールを連れて行くのが一番良い方法なのだろうとは思っていたが、何分地上の土地勘というものが無くどの方向
を目指せば紅魔館に辿り付けるのかまでは分かっていなかった。その為、ヤマメは一番人目につきやすい場所を考えていた。
 
 「(里が一番人目につきやすいんだろうけど…)」

 里が確かに一番良い。だけどその分危険度も増す。
 すっかり忘れかけていたが、まだ霊烏路空はこいしの命令? によって地上に残っているはずだ。このまま里に置きっぱなしにしておいたらもしかしたら
非常に危険かもしれないとヤマメは考えていた。だが、そこ以外にヤマメが知る場所は特に無かった。そりゃ、知っているのならば博麗神社や紅魔館が安全
なのだろうが。

 「(里しかないか)」

 そう決めると、地上へと加速した。

 ――――――――――――――――――――眩しい。
 

 「………ん」

 フランドールが地上の光に反応する。
 
 「(暖かい・・・)」
 
 背負ったフランが少し重くなったことに気付いたヤマメはようやくフランドールが意識を取り戻したことを知った。

 「おはようさん」
 「ん……………おはよう……?」 

 朝の匂いがした。夜に生きる妖怪ではあるけれども、この匂いはなんともいえない暖かさを感じて好きだった。だが体は陽に当てるとジリジリと焼けて
いく。ヤマメはあわてて飛ぶのを止め、糸をフランドールの体中に巻いていった。

 「吸血鬼は陽が弱点だったってこと忘れてたわ」
 「まだぼけーっとする。私は……今どうなってるの?」
 「死にかけ寸前で生きてるって感じかい?」
 「そう、まだ私………生きてるのね」

 実感が無いが自分はなかなか死ぬに死ねない身体なのだと改めて理解する。フランドールも伊達に吸血鬼として495年以上生きてきたわけではない。

 「神がいるとしたら、私にまだ生きろと言っているのかしら? それともそれを望んでいるのは悪魔なのかしら?」
 
 悪魔の妹。自身も悪魔と呼ばれる故におかしな発言だったが

 「誰も何も言ってないさ。ただ、私はあんたに生きててほしいと思った。いや、なに深い意味はないよ。ただなんとなくそう思っただけさ」

 ヤマメは少し照れながらそう言った。

 「前にも言ったけど、私自身も忌み嫌われた妖怪の一人だ」

 照れていた顔が真剣な顔に変わる。ヤマメがこんな顔をしたのは会って初めてだった。初めて……フランドールに妖怪としての一面を見せたのだ。その顔
がフランドールにはいつしかの姉のような顔に見えて仕方なかった。

 「あんたみたいに地下に追いやられ自暴自棄になり暴れた時期もあったよ。正直生きてる意味が分からなかったさ。でもあいつら……ああ、私の今は親友
と呼べる奴らと出会ったことで私の生きている意味をだんだん知っていくようになった」
 「親友……」
 「そうさ、フラン!  生きてるって事はね、人間妖怪関係なく出会いの連続ってことなんだよ。私はあんたほど長くは生きてないけどあんたより長く人生
を謳歌している自信はあるよ。フラン、あんたはまだ片手で数えるくらいしか他人と触れ合っていないと思う。もっともっと多くの人と出会う事を私はおすすめするよ」
 
 にっこりと微笑むとヤマメの糸がフランドールを視界を遮った。
 誰かが言っていた。魔理沙か妹紅か、誰か分からなかったが確かに今ヤマメの言った事はフランドールの心に強く残っていた。

 「じゃあ……」
 「うん?」
 「じゃあ、ヤマメも私の人生で出会う一人になってよ」
 「……ははは! うんうん……! そうだね。もう私もフランの………友達さ!!」
 「ともだち………。いい響きね」

 にっこりと笑うと 

 「ありがと!」

 と、素直な言葉を解き放った。その素直な言葉にヤマメは少し、胸に感動を感じた。きっと大きな器になると、そう感じたのだ。今は溢れんばかりの水、
それを受け入れる器ができていないだけなのだ。これからだ、まだまだ芽がでてきたばかりなのだ。こんなところでこいしの遊びの犠牲になるのはもった
いない。もったいない・・・・・・・・・。

 「もう少し寝てなよ。私が安全なところまで運んでやるからさ」

 繭のよう包まれたフランドールの身体がふわっと浮くと、彼女の意識は再びまどろみの中に落ちていった。



 ※※※


 
 「そういえばお燐、お空はまだ地上から戻ってきてないの?」
 
 さとりは思い出したようにお燐に尋ねた。
 びくん、とお燐はしっぽを震わす。完全に記憶の彼方から忘れ去ってたことを物語っていた。

 「にゃ……」

 言わずともさとりにはお燐の声が聞こえた。というよりもう反応でバレバレなのだが。

 「忘れてた………のね?」
 「にゃああああああ!」

 はぁ、と溜め息を着くとさとりは椅子から重い腰をあげ立ち上がった。
 
 「お燐、地上へ行くわよ」
 「は、はぁ~い!!」
 
 特にこれといった準備もせずさとりとお燐はヤマメの後を追うように地上へ向った。
 ヤマメとフランドールが地霊殿を出てから数時間後の話であった。


 ※※※


 人の里の付近。まだ朝日がでて早いが後1時間もすれば人がまばらに行き交う時間になる。木陰にフランドールの顔だけを繭から出した状態でその場にゆ
っくりと寝かせると、ヤマメは踵を返し地底の方に歩き始めた。
 
 「(さてと…………)」

 直に戻るわけにはいかない。この目でちゃんとフランドールが里人に発見されてから戻らないと……。そう思うとヤマメは近くの木の上に登りその時をじ
っと待つことにした。

 ――――――――――――――――――――――おかしい

 そう感じたのは木に登ってから1時間半も経った頃だった。人が通らないというか、これはもう人の気配すらしなかった。太陽が昇ってからだいぶ経つと
いうのに家から出てくるものが一人もいないというのはさすがにおかしな話だ。あまりにおかしいのでヤマメは木から降りて、里を少し歩いて回ることにした。
 妖怪が歩いても太陽がでている間なら地上でも受け入れられる、そう考えると一番人通りが多くなりそうな大通りらしき道を行った。地底じゃあるまいし
妖怪でもあるまいというのに、やはり人一人として歩いていなかった。建て並ぶ茅葺きの家は全て戸をされており中に誰かが居そうな気配も無い、田畑は整
理され、馬も牛も猫一匹居そうな雰囲気ではない。……何かが起ったのか? それならばその何かとはなんだ?
 そういえば、ヤマメは地上にから地底にフランドールを運びお燐、こいしがそれを追ってきたがあの空という妖怪の行方は分かっていない。

 「(私はフランドールを地底に連れて行った後、里がどうなったのかを知らない――――)」

 なにかがその後起ったことは確実―――嫌な予感というのはとても当たるもので。ふと、道端に落ちていた新聞に気付く。だいぶしわくちゃになっていた
が日付は最近のものだった。

 ――――文々。新聞

 里が大噴火?!
 ○×季、○日、午前、突如幻想郷の人里南西に火柱が立った。里の博識の者達によると地底で大規模な火山活動が起ったことにより発生したものらしい。
 最近、里では外の世界からきたという風祝の少女と天人との一件で地震が多発し地殻変動が起きていた。その影響によるものだろうと関係者は語る。
 周囲に住むものたちは里長の呼びかけで安全と判断されるまでは違う場所へ避難する予定となっている。

 ――――

 「(……違う、これはフランドールらが戦った場所。この火柱というのはおそらくフランドールか空の攻撃だ。多分、この天人の一件があったからそう思
っただけで実際は火山活動など…… ……いや、あるいはそれがあの空の能力なのか?)」

 真実はどうであれそういうことならば、とにかくまたフランドールを別の場所に移さなければならない。新聞をばさっと捨てるともと来た道を急いで戻る
ことにした。
 だが………その足がふいに止まる。

 「何の用……? フランドールではなく、私をストーキングするなんて貴方も趣味が悪くなったようね……」

 ――――――――ぐわん、ぐわん
 何時からいたのか、最初からなのかどうかも分からないが
 
 「古明地こいし………」

 彼女はそこに居た。 

 「………」
 
 ざらりと嫌な感触が空気を澱ませる。ヤマメの顔から向って左手の腰掛けにそれは座っていた。
 両の目は帽子に隠れて見えないが、閉じた瞳がこちらを捉えているように感じる。

 ――――――――ぐわん、ぐわん、ぐわん、ぐわん!!!

 ヤマメの頭に警鐘が鳴り響く。こいつからは先の戦いとは少し違う感覚がするぞ――と。

 「………ああ、少し聞きたいことがあって」

 この作戦はすでに最初から失敗していたのかとヤマメは悟った。気配の達人であるこいしがお燐の気配程度気付けないわけが無いのだった。見張っていた
お燐の動向はすでにこいしに見破られておりその上で泳がされていたのだ。
 ………それがこいしにとって一番都合がいい。何故ならさとりやそのペットであるお燐と争うことなくこの地上にてフランドールを再び手中に戻すことが
できるからだ。さとりはこれでフランドールの件は終わったと勘違いする。

 「聞きたいこと、ね………」

 勘違いさせたいまま、終わらせたいのなら私に話しかける必要は……果たして?

 Spell Card!!! 蜘蛛「石窟の蜘蛛の巣」

 「む………」

 初動作無くノータイムで放った一つの弾丸はこいしに向けられたものではなくヤマメの上空向けて放たれていた。数メートル上でボンとくす玉が割れるよ
うな音と共に弾け飛ぶとそこを中心に『糸』が360度全体に広がり地面へ、木へ、民家へと張り巡らされた。かくしてヤマメの狩場、土蜘蛛の巣が上空に出来上がったのだ。
 上空を覆う巣は逃走通路を絶つ。こいしをフランドールのもとへ行かせない為のものだった。勿論ヤマメを追跡してきたということは今はフランドールに
用はないのかもしれない。だが気が変わることもある。特にこいつ、古明地こいしは。

 「なるほどね。地底に入る事、出る事を拒む最初の難関、土蜘蛛の巣……。
  『石窟の蜘蛛の巣』………そのスペルで私の移動範囲を封じると」
 「蜘蛛の糸は知ってのとおり強力さ、一度捕まったらその脱出は困難を極める」
 「ふぅん………それは厄介ね」

 さほど厄介そうにも思っていない声でこいしは呟く。実際これはヤマメにとってもフェイクでしかない。いくら糸が丈夫でもそれを支えている地面であっ
たり木であったりはそうではないからだ。だがこれをすることで何秒かは時間稼ぎが出来る。その数秒はとても重要なことだった。 

 「聞きたいことがあるんだろう? …じゃあ私を倒すしかないんじゃない?」
 「私は貴方に聞きたいことがある、その用件1つなんだけど……どうやら貴方も私に用件があるみたいね」

 Spell Card!!! 毒符「樺黄小町」

 ヤマメの足が地面から離れる。目に見えるか見えないかくらいの細さの糸がさっき上空にはなった巣の中心線からヤマメの身体に伸びていた。その糸がヤ
マメを宙で支えていた。身体が宙で逆さまになり、ふわりと浮いている。 

 「以前、旧都で蜘蛛を殺した記憶はあるかい?」
 「…………私が殺したのかな? そうだとしたら多分無意識でやっているから憶えてはいないよ。残念残念」
 「……そうかい。私も残念さ…!」

 すでに宣言されているスペルはヤマメの両の掌に収縮させており、弾幕をこいしに向けていつでも放つことができた。1つ1つが野球ボール並みの弾丸、
その数は両方あわせて10発という少なさではあったが、『樺黄小町』はそういうスペルなのだ。
 
 「―――樺黄小町」

 ぶん、ぶん、ぶん、ぶん、ぶんと轟音を立て右手から飛ばした5つの弾丸がこいし目掛けて放たれる。

 「無意識」

 ヤマメの視界からうっすらとこいしが消え始める。
 弾幕の先にはすでに誰も居ない。バキバキ、と音を立てて砕けたのはこいしが腰掛けていた木の腰掛だけだった。

 「ちっ、意識外へ飛んだね!」

 じゅわあと凄い音を立てて弾幕が命中した木が溶解する。

 「(溶解液……! いや消化液といったほうがいいみたいね)」

 こいしは無意識下でそう考察すると数メートルを瞬間で駆け抜けヤマメの後方を取った。

 「(読んでるよ)」

 先読みしていたヤマメはカウンターを仕掛けるために左手を手首を捻り後方に狙いをつける。それをこいしも察したのかその場からそれ以上は動かなかっ
た。
 
 「(……超集中による意識のコントロール…か)」

 意識外からこいしが戻ってくる。無意識を付いた認識の解除を突破されたからだった。姿を見せたこいしはヤマメに尋ねた。 

 「よく私がここに、この位置に来るって分かったわね」
 「おそらく、その場所を通り私に攻撃してくることは予測できていた」
 「……ねぇどうして? すごいじゃない! どうしてわかったの?!」
 「旧都でのあんたが殺した妖怪達と、2度のフランドール戦から確信したよ。旧都で転がっていた死体の胴体と首を切断された切り口は首の後ろ側が鋭か
った。あんたの弾幕で死んだと思われる妖怪も全てとは言わないが7~8割は後ろから撃たれたものが致命傷だった…。そして初のフランドールとの戦いで
はあんたはやはり後ろから攻撃を行った」
 「…………」
 「あんたは背後をとりたすぎる」
 「やるねぇ、さすがお姉ちゃんが気に入った妖怪さんだ」
 「無意識に動くということはランダムに動くことではない。決まられたある行動パターンを一番素早く、簡単に行うために脳に伝達を送らず反応させる事
だ。無意識を操るというあんたはそれすら操ることができると思っていた。だが実際は違うようだね」
 「なかなか勉強家ね。私もその事は『気が付かなかった』。次回に生かさせてもらうわ」
 「次回は無いよ。あんたはここで終わりだ」
 「貴方はお姉ちゃんのお気に入り……でも私がここで終わりになることはもっとお姉ちゃんが悲しむ……」
 「それは私も同じこと。親友の妹を終わりにするのは、同胞の敵といえど多少なりとも心が痛む」
 「だけど勝つのは私――!」
 
 目を大きく見開くとその鋭い眼光でヤマメを睨む。
 
 「稀に……」
 「?」
 「稀に弾幕ごっこで何が起ったのか分からずに意識が飛ぶことがある。………気がついたら相手に介抱されていてそこはベッドの上だ。ああ、私は弾幕ご
っこに負けたのかとそのとき初めて気付く……。どうやら私は相手が放った『気付かない弾』に当たってしまったらしいということを後で聞いた。本人も狙
ってやっていたわけではないらしくいわば流れ弾みたいなものだった」
 「ふふふ……」
 「そう! これがあんたの不意打ちの正体だ。 人間でも妖怪でも同じように、全く気を付けていない場所からの攻撃には思った以上のダメージを受ける。
なんせそこから攻撃されるとは夢にも思っていないのだから……! これは死角と似ているが少し違う。死角とは違って反射神経ではとても回避できない予
測範囲外からの攻撃……! 100の鉄壁を前に張ろうと、後ろの1から侵入してくるあんたにはさほどどうでもいいという事を知ることが出来たよ。
 しかし、私には蜘蛛の眼がある。この眼には死角を作らせないし、なにより――――」

 ピンと張ったヤマメとこいしの間には目を細めてようやく見える細い糸が無数に張り巡らせてあった。こいしがヤマメの話を聞いていたのは気まぐれから
だったのだが途中で攻撃を仕掛けなくて正解だっと言えよう。このトラップに気付かず突っ込んでいたら………肉塊となっていたのはこいしの方だっただろう。

 「いつの間に……」
 「さすがに見えるかい。第3のスペル、『キャプチャーウェブ』……それは捕らえる為のものじゃあない、切り裂くための糸さ」

 Spell Card!!! 罠符「キャプチャーウェブ」

 「光に反射するその糸の芸……!! そうかぁ、最初にフランドールを襲ったとき、見えづらい煙の中でも見えていたよ! あれも貴方の仕業だったのね」
 「いまさら気付いたかい?!」

 巧い攻撃方法だとこいしは感心する。徐々に動ける範囲を潰していき、獲物を追い詰め最後に捕食する。実に昆虫らしい捕食の仕方だ。だがはっきりこう
思いもする。――――――――舐めているのか? と

 「どうだい? これでも私に致命傷を負わせることが出来るかい? 私に致命傷を負わせない限り、耐久戦に縺れ込む! 耐久船にも連れ込むということ
は、蜘蛛の糸で絡み取られるのと同義! そうなったら不利なのはあんただよ。古明地こいし!!!」

 ――――このとき、初めてこいしは拳を構えた。

 「!?」

 これにはヤマメも一歩身を引くぐらい驚いた。
 今までに全く見たことのない奇妙な構え。それは構えというよりもポーズだとヤマメは思ってしまうほどの奇妙さだった。片足を上げ、両手を天に翳す。
そんな鷹を真似た奇妙な構えは見たことも聞いたことすらも無かった。
 だが、その構えから何が繰り出されようとヤマメの先手必勝の意は変わらない。左手に残った5つの弾丸を構えをとるこいしに全力で撃ち込むのみ。

 「樺黄小町!!!」

 キャプチャーウェブの網目を掻い潜り、樺黄小町の弾は蛇みたいな動きで、それでいて蜂のような素早さでこいしを仕留めようと狙いを定める。
 こいしは動かない。動かない。動かない。動かない。動かない。
 動かない。動かない。動かない。動かない。動かない。動かない。動かない。動かない。
 動かない。そして、弾幕が命中する―――そう、その0.001秒前までは。
 
 「――――――――――――――――――捕まえた」

 ぐねぐねと動く触手(シダ)のようなものがこいしの周りの空間から生え、それはヤマメの放った弾丸5つを全てがっしりとキャッチしていた。

 「なんだあれは………」
 「これが私がフランドールと出会い得た新しい力……! 『胎児の夢』……!!」

 Spell Card!!! 「胎児の夢」

 「無意識的防御の真骨頂っていうわけ………? けれどそのデザインはとても……趣味がいいとは言えないわね」
 「防御……? ふっ」

 その顔に薄ら笑いを浮かべると触手(シダ)は弾丸を握りつぶす。どうやら触手(シダ)に溶解液は効かないらしいという事が分かるとヤマメも次の手
をすぐに打った。

 「私にこのスペルを使わせたんだもの………今度は真正面から行くよ!!!」

 キャプチャーウェブの糸のトラップを触手は無理矢理握り締めると無理矢理引きちぎろうとする。土蜘蛛の糸は強力だが、それをただのタコ糸かと思わせ
るような扱いで無理矢理糸を引きちぎり、掻き分けてこいしは近づいてくる。今まで彼女に備えていなかったパワーをこのスペルは持っているのだ。
 
 「(まずいね……)」

 宙へ突進してくるこいしにヤマメは逆さになったまま今度は右手を捻った。そう、右手の弾丸は木の腰掛けに命中しただけで死んではいないのだ。地上の
人形遣い同様ヤマメも芸が細かく、5つの弾丸にはそれぞれ魔力を通した糸が付いていたのだ。正面から迫り来るこいしに斜め下から弾丸が襲い来るかたち
になった。

 「無駄ぁ……!!」

 弾が飛んできた方向には見向きもせずこいしは前進を止めない。今度こそ命中した樺黄小町の弾もやはり実際には当たっていなく、胎児の夢の触手にあえ
なく絡み取られていた。それを見てヤマメは後退する。胎児の夢のパワーはすごい、だが土蜘蛛の糸を切り裂くには少々の時間が必要であり、そのわずかな
時間は命取りになる。この細かい蜘蛛の巣の網目を潜り抜ける弾幕は自身の樺黄小町以外は難しい。本気で仕掛けてきたらたちまち切り裂かれてしまうだろ
うが、こいしが油断して巣の中にいる間、彼女はきっと弾幕では攻撃をしかけてはこない。……そこでこちらは弾幕、肉弾戦以外での攻撃に出る。
 これはもはや弾幕ごっこではない――――殺し合いにしたのはあんたなんだから……恨んでくれるなよ。

 「………フィルドミアズマ」
 「?」

 Spell Card!!! 瘴符「フィルドミアズマ」
 
 単純にこのスペルを言い表すと、ウイルスだった。
 ヤマメの能力は“病気を操る程度の能力”。弾幕も発生しないし、煙が発生するわけでもない。無色透明無味無臭のこのスペルは一見何も起っていないか
のように見える。しかしこれこそがヤマメの能力の真骨頂であり、当然地底に封印された理由でもあった。

 「何……した?」
 
 一回でも大気中に舞うそのウイルスを吸い込めばお終いだ。これがヤマメが最初に考えていた、そして最後のとっておきだった。その為に簡単に逃げられ
ないような「石窟の蜘蛛の巣」を張り、「樺黄小町」で挑発し、「キャプチャーウェブ」の中に誘き寄せる。こうすれば気付き、逃げるまでに多少の時間が
かかる。その間にこの場の大気中にウイルスが蔓延する。

 「ゴホ……ッ」

 急にこいしが咳き込みだす。自分の身体に異常事態が起きている事をすぐさま察知する。
 感染病……!
 思い出した。旧都に確かにそんな能力を持った妖怪が“何匹”かいた……!
 こいしはすぐさま呼吸を止める。だがえづいて呼吸をやめることは出来ない。

 「ゲホッ、ゲホッ……!!! うええええっ」



こいしVSヤマメ



 「嫌われ者のフィロソフィ」を使うか? これなら例え遠くからでも………いや駄目だ。アイツを殺すのに10秒以上かかる。そもそも殺したとしてもこ
の病は治る可能性は低い。
 やばいやばいやばいやばい………!!
 
  Spell Break!! 「胎児の夢」
 
 そうこう思っているうちに集中力が途絶えたのかこいしが纏っていた緑色のオーラと触手が消えてしまう。集中力が切れたこいしは宙で浮遊することもで
きず、羽が傷ついた蝶のように蜘蛛の巣の上に落ちる。ピアノ線のごとくピンと張った糸にこいしの柔らかい肌が食い込み、その部分が切り裂かれ血がポタ
ポタと地上に落ちた。人間ならばそのまま肉塊行きだったがさすが妖怪というべきか頑丈だった。

 「遊びじゃないんだよ……お前がしたことは」
 「………ぜぇぜぇ」

 虫の息、呼吸すらまともにする事が出来ない、体が熱い―――――

 「毒を使ったの……ぜぇぜぇ」
 「熱病だ。それも空気感染する程のね。対応手段はあんたには無い。正直気持ちのいいやり方ではないけどね」
 「ここまで追い詰められたのは……はじめてだよ」
 「もう喋るな……」

 頭がぼーっとするが、糸の上で踏ん張りを入れればまだなんとか立ち上がる事ができる。手も動く。喉の奥から胃液が押し寄せてくるが、我慢は出来る。
 「こいしはつよい子ね」とお姉ちゃんが見守ってくれている。
 まさか、こんなところで使うことになるとは思っていなかったが―――――

 「(……なんだまたやるっていうの……?)」
 「………いいわ。貴方に、敬意を表して使ってあげる。フランとの戦いでも使わなかったこのスペルを」

 そう宣言すると―――――ヤマメは再びこいしの存在を、認識できなくなった。

 「キャプチャーウェブ!!! 無駄だ、移動すればあんたの周りを囲う私の糸があんたの居場所を教えてくれる!」

 蜘蛛の巣がヤマメの周囲に何重にもなって張られる。攻撃しようと動けば何処かの糸が必ず反応し、その衝撃は糸を通してヤマメに伝えらる。そうなると
ヤマメは樺黄小町でこいしを狙い撃ちにするだけだ。いくらこいしの戦闘能力が高いといってもフィルドミアズマを喰らった状態では大してスピードもパワ
ーもでないだろう。さっきのように簡単には避けれないとヤマメは考える。
 
 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――
 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――
 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――
 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――
 ―――――――――――――――長い。

 ヤマメの集中力は臨界点に達していた。その状態で10秒20秒「待たされる」というのは非常に辛いものがあった。
 
 「(集中力が切れるのを待っているのか…? それとももう認識されないまま、死んでしまったのか)」

 ………誰にも気付かれず、死んでいく。ヤマメは考えただけでゾッとした。
 
 
  
 ※※※



 次に目を開いたのは、冷たくなった地面の上でだった。

 「………」

 空が私の作った蜘蛛の巣で隠れていることがわかる。そして――――私自身が血まみれで大地に転がっているということも。

 「………ぐ」


こいしVSヤマメ2



 「………サブタレイニアンローズ」
 
 ヤマメは体中を引きちぎられたように全身から血が流れていた。痛みが全身を襲っていたが痛みの悲鳴は絶対に口にはしなかった。
 私を見下ろしていた敵をあえて喜ばせる必要性など何処にも無いからだ。
  
 
 Spell Break!! 蜘蛛「石窟の蜘蛛の巣」
 Spell Break!! 毒符「樺黄小町」
 Spell Break!! 罠符「キャプチャーウェブ」
 Spell Break!! 瘴符「フィルドミアズマ」

 

 一体何をされたのか、全く……全く分からなかった。本当に、あれだけの「キャプチャーウェブ」と私の八つの眼を掻い潜って、どうやって……? 空間
を移動して? それとも音とか光とか…?

 「究極の意識外攻撃……。
  “稀に弾幕ごっこで何が起ったのか分からずに意識が飛ぶことがある”………どうだった?」
 「………ぐっ……うっ」
 「本当に何も分からないって顔をしてるね。………そういう顔、何度も見てきたわ。もう死ぬ貴方だから教えてあげる。
  このサブタレイニアンローズ……発動中は、生き物だけでなく、物にも、時間にも……そしてこの世界からも気付かれることが無い。
  蜘蛛の糸がそこに在ろうと……私には引っかからなかったという認識でその出来事を終える。弾が私に当たっても、弾は私に気付かずに通過し、結果…
…後ろの石に命中する。ウイルスが私の体の中を侵食することもサブタレイニアンローズ発動中はそれもない」
 「馬鹿な……例え気付かなかったとしても現実としてその出来事は起きている……。蜘蛛の巣には引っかかったし、弾は確実に肉にめり込み風穴を開けて
いるはず……ましてや自分の身体の中にある物まで無視するなんて……ありえない」
 「だから言ったでしょう……この世から気付かれない。
  正確ではないけれどサブタレイニアンローズ使用中、私はこの世界に存在しないという事になっているの。勿論本当は存在している。けどそれに誰から
も気付かれないの」
 「―――――引き裂かれている事も気付かなかったって言うのかい……」
 「そう……でもまだ急所ははずしてある……少しだけ貴方を殺さずに生かしておいてあるわ。ヤマメさん……フィルドミアズマのウイルス感染を治しなさ
い。そうすれば命だけはとらないであげる」

 こいしの口から血が滴り落ちる。この至近距離では何をされても致命傷、最早逃げ道は無かった。だが、サブタレイニアンローズ発動前に吸い込んだフィ
ルドミアズマのウイルスは身体の中から取り除かれたわけではなく、再び効いてきているのだ。おそらく放っておけばこいしもいずれ死に至るだろう。

 「さぁ……早く病を……!」
 「ふっ……。
  ………私達は……所詮忌み嫌われた…妖怪……よ。
  命なんてね……はっ、最後までまともに全うできるなんて……考えては無かったわ」
 「………だけど、この質問には答えてもらう。スペルカード、……妖怪ポリグラフ」

 Spell Card!!! 反応「妖怪ポリグラフ」

 行き絶え絶えのヤマメの心の臓にがっちしと1つの爆弾がセットされる。
 フランドールにも仕掛けたそのスペルだったが、以前と違い、ポリグラフの目玉は一回り大きく、球体の形状も凸凹と少し歪に変化していた。

 「妖怪ポリグラフ……私の問いに答えてもらうわ。……このスペル発動中は私はこのスペルの対象者に攻撃することはできず、相手も私に向って何かをす
ることも不可能になる。このスペルの制限時間はなく、私が行う1つの質問につき回答時間は10秒……。
 嘘、または答えない場合メーターが溜まっていき、そしてこのスペルが解除されるとき、取り付けた嘘発見器は爆発する。
 その全てが終えたとき、自動的にこのスペルは解除されるわ。……質問はたった1つ」
 「………」
 「フラン……フランドール・スカーレットは今何処に居るの?」
 
 この質問を受けたとき、ヤマメは戦うべきではなかったと後悔し何を勘違いしていたんだと思っていた。

 「(……クソ、そういうことか)」
 
 そうだったのだ。ずっと地底から追跡されていたと思い込んでいたがそうではなかったのだ。

 「(……道理で攻撃も何も無いわけだ。“私に聞きたい事がある”という言葉と、偶々、偶然こんな場所でこいしと出会ってしまったが為に完全に勘違い
していたっていうのか……)」
 「………6、5…」
 「………フランの居場所か……教えてやる……から。もっとこっちに耳を………。もう……声が………」
 
 こいしはヤマメの顔にそっと耳を近づける。普通なら瀕死の敵に急所をさらすという危険な行為だが、妖怪ポリグラフ発動中は何も出来ないという自信が
あるからだ。勿論ヤマメにはもうそんな力も気力も無いのだが。だから、だからこそ―――――

 「―――――かわいそうなヤツ……」
 「…………」

 ドン!
 最後の抵抗もむなしくどこか寂しい破裂音が鳴ると、里は元通りしんと静まり返った。
 ―――かわいそう? 私が……? 
 
 「………笑わせる」
 
 ニタリと微笑むと一言そうつぶやいた。

 「しかし……はぁはぁ……。さすがお姉ちゃんの親友……随分と梃子摺らせてくれたよ。結局私はフランの居場所を掴むことができず、こんな病まで貰い
受けてしまった……」
 
 ―――完全な治療には3日は必要か……この“吸血鬼の身体”を持ってしても。
 ………さぁて。
 ペロリと舌鼓を打つと突然、ヤマメの首筋に噛み付くとこいしは―――その血を吸い始めた。
 今はそれほど大量には血液は必要ない。私の身体に吸血鬼の血はまだ馴染んでいないのだから。これから――これからどんどん馴染んでいき私はもっと強
くなる。そう思いこいしは吸血を止め立ち上がった

 「――――っ」

 ―――立ちくらみ。
 ヤマメに貰った病のせいではない。 
 太陽がとても眩しく感じるからだったのだ―――。
 地底に太陽が無いせい? 吸血鬼の血が少し馴染んだきたから? それとも――――
 
 「太陽が………そう。なら私の出番は……3日後でもよさそうね」
 
 もう少し、大きな帽子をかぶり直そうと思い、吸血を終えたこいしはふらりとどこかに歩き出した。


※※※

 
 太陽が眩しく感じたのは地底に太陽が無いせいではないし、吸血鬼の血が少し馴染んだからということは確かにあるのかもしれなかったがそれだけの理由
ではなかった。太陽光線の熱量が増し、単純に眩しかったのだ。
 ――――――――蒸し暑くなった幻想郷の夜―――その日、夜空に登った“もう1つの太陽”はいつまで経っても沈む様子は無かった。



 続く。
 
 
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