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人生を全て捨て効果発動☆
19話あげました。これで次回からようやくこいし戦です。
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フランドール・スカーレットVS古明地こいし 12 黄金の華の秘密-Subterranean Rose- ②
黄金の華の秘密-Subterranean Rose- ②

 「ねぇお姉ちゃん、紹介するわ。
  この娘が私が言っていた吸血鬼のフランドールよ」
 
 愕然とした。
 血まみれのこいしが持って帰ってきたのは瀕死になったフランドールだった。何が起ったかは私が頼んだことだから分かっていたが…
彼女でも止められないほどこいしは強くなってしまっていたのだ。
 こいしは平然とした顔でフランドールの羽を片手に持ち、ずるずると引き摺りながら屋敷の内に入っていく。
 
 「お姉ちゃん、2階の奥の部屋空いてたよね。ちょっと借りるね」


koifura3.jpg


 スタスタと私の横を通り過ぎると階段を登っていった。段差にぶつかって意識は無いがフランドールが痛そうに反応にしているのを見て、思ったよりダメー
ジは深くないとさとりは判断する。さすがに罪悪感があるのか、死んでいないことにほっと様子を見せた。

 「そうそう、お姉ちゃん。
  借りたペットだけどね、お燐は何処かに逃げちゃったんだ。ごめんね」

 申し訳ないという声色ではなく、まるで台詞を棒読みするかのようにさとりにそう報告した。

 「お空は?」
 「あ~~、お空は…まだ地上に居るんじゃない?
  んふふ、多分ね」

 含み笑いをしながら、こいしは2階の奥に向う。その時だった。
 ちり~ん。・・・開けっ放しにしていたエントランスの扉から風が入り、鈴の鳴る音がする。
 
 「……」

 にゃ~ん。と、猫の鳴く声でこいしは歩くのを止める。

 「あら、おかえり」
 「(・・・フランドールと、その事後処理で手一杯で殺し忘れてたなぁ)」

 お空は馬鹿だからともかくお燐はお姉ちゃんの従順なペットだ。きっと最初から私の事を見張るよう言われていたのね。
 
 「(いいペットを持ったね、お姉ちゃん・・・そしていい主人を持ったね、お燐)」

 まぁチャンスはいずれやってくる。この先もずっと地霊殿で暮らすのだから。
ぎゅっとフランドールの体を強く掴むと、こいしは振り返らずに再び奥の部屋に向おうとする。
 
 「こいし」

 エントランスから階段上にいるこいしを第三の目で見上げた。近いのに遠い。姉妹なのにたったこれほどの距離感が埋められない。だけど…

 「必ず私が貴方を助けてあげる。・・・例えどんな手段を使っても」
 「・・・その為に、お燐やフランドールを犠牲にしても?」

 振り向くとさとりの第三の目を見下ろす。

 「・・・気付いていたの」
 「心を読めなくても、お姉ちゃんの考え付きそうなことくらいわかるよ。
  お姉ちゃんがフランをこっちに呼んだんでしょ?
  そうでなきゃ、地底の事すら知らないフランがここの事なんか知るわけがないもの」
 「・・・・・・」
 「お姉ちゃんが私を助けるように、私もお姉ちゃんを助けてあげる。
  楽だよ~?他人の声を聞かなくていいっていうのはぁ~」
 「・・・そりゃあ楽でしょうね。
  でもそれで貴方は救われているの?本当に?」

 確かにサトリの持つ能力は・・・決して幸せにはなれない能力。
しかし、サトリである存在を捨てて、風来坊のようにふらふらと生きてそれで・・・それで幸せなはずが無い。
 そんな幸せであるはずがない道を、救いの道としてこいしは選んでしまったのだ。例えそれが逃げの道だと知っていても。

 「・・・ええ。
  救われてるわ。心の声を聞くなんてうっとおしい能力なんてなくてせいせいしてるわ」

 さとりは最近よくこう思う。妹はサトリとしては生きてはいない。何か別の・・・生き物になってしまったのだと。
 もし彼女を別の妖怪として呼ぶのならば……『妖怪コイシ』とそう呼ぶだろう。でも、それを口にしたら・・・ ・・・もう2度と姉妹には戻れない気がした。
 例え血の繋がった姉妹でも、例えどんな長く一緒に居たとしても変わってしまうのは一瞬だということを分かっている。・・・いやもう変わってしまった後な
のかもしれない。
 それでも今ならまだ間に合う。あの楽しそうなこいしの笑顔がまだ取り戻せる。そんな気が…そんな気が………
 と、そこまで考えてさとりは違和感を覚え目の前をもう一度見直す。

 「?」

 違和感。さっきと何かが違う。決定的に…

 「え!?」

 …まずい。いつの間にか、フランドールが1人床に倒れている。それが何を意味するかは考えずとも分かった。

 「(消えた…!)」 

 ずっと見ていたのに全く居なくなった事に気付かなかった。いや、私には分かっていた。だけど、こいしの能力は分かっていても反応できないのだ。
 猫状態のお燐の尻尾が逆立つ。

 「ニ゛ャーニ゛ャーニ゛ャー!!!」

もうこいしを

                        認 識 で き な い 。

 お燐の鳴き声が警告音のように脳に響く。
 いくら妹を他の者より感じられる私でもこいしがかなり近くに来るまではこいしを認識することは不可能―――。        

 「こいし?! 何処にいるの? 出てきなさい!」

 焦っているのか、いつもは冷静なさとりが声を荒げる。いつもはそんなことでは声は荒げないが、何か危険な気がしたのだ。
 そのせいか「何処にいるの?」と全くもって意味不明なことを口走る。
 …目の前の階段を今、ゆっくりと下りているに決まっているというのに。首筋にうっすらと嫌な汗をかく。

 「・・・っ」
 
 風が横を通りすぎた後に、背中に冷たい体温を感じた。・・・背中に体重がかかりこいしを認識する。階段を下りて、さとりの背後に近づいたこいしはさとり
に後ろから抱きつき耳元で囁いた。

 「嗚呼、可愛そうなお姉ちゃん・・・なまじ生き物の声が聞こえるせいで他人を信用できなくなってしまったかわいそうなお姉ちゃん。
  大丈夫・・・私がお姉ちゃんを助けてあげるから。・・・お姉ちゃんが憎みきれなかったものを私が代わりに憎んであげる。
  フランも協力してくれるって…ふふふ」

 憎しみ。悲しみ。
 私に寄りかかっているこいしの体重がとても重く感じられたのは、こいしが背負いきれなかったものが溢れているからだろうか。憎しみと悲しみが混ざり合った
泥のような感情がこいしの小さな体から溢れている。それを姉である私が受け入れることも出来なかった。
 だから私は―――それにどう返事したらいいのか・・・分からなかった。

 「こいし…腕、怪我してるわよ」

 今まで気付かなかったが、こいしの腕は折れ、手は焦げついておりフランドールとかなりの熱戦を繰り広げたことが伺えた。

 「この程度なら2週間もすれば自然治癒するよ」
 「結構梃子摺ったのね」
 「う~ん、でもね…正直フランはちょっとがっかりだったかな? まるで本気を出していないみたいな…」

 それは当然だ。
 フランドールは吸血(じぶん)を抑制していてそれどころではない。最初からこいしとの勝負どころではないのだ。
 …そう、それでも私が頼んだらこう、なんていうか…快く、あっさりと引き受けてくれた。もちろんその際にフランドールの心を読んだのだが、彼女自身に
もなにか案があったというわけではなさそうだった。
 と、なれば矢張りこの結果には罪悪感が残る。分かっていて死にに行かせたようなものだ。だけど、そのおかげでお燐は無事こうして帰ってきた。

 「にゃ~ん…」

 さとりは、お燐の心を読みすでにこいしがお燐を始末しようとしていた事を知っていた。
 今もひどくこいしを警戒している。

 「こいし、フランを部屋に運んだら後で傷の手当してあげる」
 「えへへ、お姉ちゃんありがと~♪」

 うれしそうにごしごしと顔を背中に押し当てる。

 「お姉ちゃん大好きだよ」
 
 これもこいしなのだ。純真無垢なこいし…。
 人間の子供ととてもよく似ている。おそらく今私がフランドールに抱いているような罪悪感というものがすっぽりと抜けている。今のこいしは悪いというこ
とを悪いと認識していない。それこそ無意識に行動している弊害なのだろうか。
 愛することも、殺すことも、憎むこともこいしにとっては同じなのだ。

 「(こいし…今の貴方を心の奥から愛してあげることはできない。
   何故なら私は貴方に恐怖を感じているから。
   貴方が今、私の心を読めなくて本当に良かったと思っているわ)」
 「~♪」

 もし私の心をこいしが読んでしまったらこいしはこの世で本当に独りになってしまう。
 本当に…なってしまう。
 私の知り得ない、なにか特別な存在に…

 「………妖怪コイシ」

 「…? お姉ちゃん今何か言った?」
 「いいえ。なんでもないわ。
  さ、行きましょ」

 『妖怪コイシ』…その言葉が無意識を操られ口から出たものなのか、それともわざとさとりが口にしたものなのかは本人にしか分からなかった。



※※※



 ピチャリと冷たい雫が首筋に落ちる。彼女の閉ざされていた意識がそこで目覚めた。
 目がかすんでぼやけてでしか見えないが、そこは薄暗い何も無い部屋。その無機質な風景にフランドールは見覚えがあったが、かつて居たあの場所とは無関
係だ。
 目覚めたばかりで今、どういう状況に立たされているのか整理するのに時間がかかった。

 「(………)」

 血が体中に行き渡り、脳に血液が流れ、ようやく満足に物事を考えられるようになる。

 「(………)」

 地底、こいし、スペルカードの暴走…。そうだ。物事が一本の線で繋がる。全てを思い出すと次の疑問が湧く。確かにこいしのスペルカード、恋の埋火を受
けてそのまま死ぬのかと思ったが。
 ふとあの時掴まれた右腕を見ると黒く焼け焦げた手形の痕がある。痛みはひいている。どうやら私がここに運ばれてからかなりの時間が経ったらしい。最低
でも1週間…もしかしたら1ヶ月…。自己回復機能が弱小妖怪並みにしか機能してない今、大気中からわずかでも魔力を集めて回復させるしかないのだ。

 「(それを含めても、だいぶ手加減したみたいね)」

 …どうやらこいしはひどく私に熱心なようだ。
 過去の記憶を思い出した今、それに関してははっきりしたが…一つ疑問もある。

 「(里でこいしに会ったとき、こいしは『はじめまして』って言った。
   もし、以前に会っているのなら…はじめましてなんて言わないと思うんだけど…)」
 
 別件で私の事を知って近づいてきたのかもしれない。
 それと分身のことも気になる。何故彼女がこいしと協力していたのかは不明だったが私が消えれば分身である彼女も消える。だから彼女がこいしを手伝うと
は思えないのだけど。となれば、何らかの方法で操られているということも考えられる。
 殺さないこと前提だったら…そう、本当に友達になるために。その為にこいしと協力した?
 いずれにしても、それは後で分かることだろう。

 「(とりあえずは)」

 ここから脱出しなければいけないか。
 手錠や鎖で拘束されているわけではないし、何か特別な結界が部屋に張ってあるわけでもない。
 が、フランドールはここから逃げ出すのは容易ではないということを悟っていた。
 
 「あ゛~~~~~。
  (考えるのって得意じゃないのにいくら考えても分からないや。それにもう魔力がすっからかん。はっ、もう煙も出ないわ)」

 大の字になって寝転がる。天井を見上げると蜘蛛の巣が角の隅に3つも。この部屋がどれだけ使われていないのかが分かる。
 ここは何処なのだろう。とりあえず助かったという確認が出来るとこの場所に疑問を持った。が、それはある程度は予想できた。此処はおそらく…地霊殿。
 こいしが唯一帰ることのできる場所…それが此処だろう。かすかに血の匂いが漂う。最初に地霊殿にやってきたとき、何かを隠蔽したような感覚を憶えたが
その隠蔽された部分を何だったのかを垣間見た気がした。
 過去に私がやったような大量の殺戮がこの地霊殿の裏では行われている。さとりは妹の事を思ってかそこまで言わなかったが、ここに出入りしている者なら
気付いているだろう。
 お燐と言ったか。あの使い魔? もきっとこのことに気付いたんだ。だから消されそうになった。
 そういえばあの後、彼女はどうなったのだろう。うまく逃げれていればいいけど・・・。
 フランドールは瞼を閉じる。体力が全然回復しない。こいしがあのスペルに1枚にどれだけの魔力を込めていたかが分かる。身体に流れる血液がにごった感
じがする。私の魔力と彼女の魔力が血に混ざっているからそんな気がするのだ。
 もう少し体を休めた方がいいと、冷静にそう判断した。
 
 「(・・・弱いなぁ私。体も心も・・・)」

 満身創痍…負けて改めて思い知らされた。確かにこいしは強い・・・だけどそれ以上に私が弱すぎるんだ。
 1年前、霊夢と魔理沙が私の部屋にやってきたときから変わり始めた。それは良い方向に変わっていたと私も思っていたし周りも思っていた。
 それから…それから色々あって私は里に遊びにいくようにまでなった。ずっとずっと地下で決まりきった人以外とは合うことはなく、自分が食べているモノ
がどんなものなのかも知らずにのうのうと永い年月を過ごしてきたのだ。そういう生活は私にとってとても新鮮で・・・なにより生きているという実感を得られた。
 変わっていく中で、私の中である感情が生まれた。他人を愛する・・・? 感情だ。壊れた人形のようにモノを壊していたときにはなかった感情。
の感情が大きくなっていく度に、失ってあっていたものもあった。それが『力』だった。
 食べ物をヒトとして認識してしまうと、もう私は1滴もそれを口にすることができなくなっていた。血を吸えない吸血鬼が吸血鬼のままでいられるはずがな
いのは火を見るより明らかだった。いずれこのままでは灰になって消えてしまうことは・・・予想できないことではなかった。
 そのことは以前から誰にも話すことが出来ず、ずっと一人で悩んでいた。その結果がこれだ。
 何が吸血鬼だ、何が悪魔の妹だ・・・ ・・・今の私は・・・。
 そこまで考えてフランドールは再びまどろみの中に身を委ねた。
 脱出はいつでもできるわけではない。わずかでもいい。先ずは体力、魔力を回復させなければならないのだ。
 いずれもう1度必ず来るであろう…決戦の時までに。




続く。


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