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人生を全て捨て効果発動☆
19話あげました。これで次回からようやくこいし戦です。
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フランドール・スカーレットVS古明地こいし 4 地霊殿からの来訪者①
地霊殿からの来訪者①
フランドールとお空、お燐の攻防を見ていたのは2人いた。

1人は古明地こいし。
気配を消して動くことは造作もなかった。
ここに来ていたのは、結局フランドールの能力を間近で見たかったからだ。

もう1人は黒谷ヤマメという土蜘蛛の妖怪だった。
土蜘蛛と言っても、ここは幻想郷。金髪とかぼちゃのようなスカートが似合うかわいらしい少女の姿をしている。
ヤマメは地底の妖怪だが、ある友人に頼まれてこいし達を追って来ていた。
他でもないその友人とは古明地さとりである。
ヤマメは地底の妖怪達の中では人気者で、分け隔てのない性格とその愛嬌を持ったヤマメはさとりの数少ない友人だった。

「(あれが吸血鬼…。強い…あれならさとりの妹と互角に戦えるかもしれない)」

ヤマメはこの場所に居るわけではなく、小さい蜘蛛の使い魔のようなものを通して見ていた。
ヤマメ本体はこの場所からはかなり遠くのほうに居る。





十凶星の大玉は、フランドールに当たるぎりぎりのところで消えていった。

「…急所ははずしておいたわ、まだやるの?」
「ぐ…ハッ…まだよ…!まだ動けるわ…!」
「お空…」

パチ、パチ、パチ…!

どこからともなく、拍手が鳴った。

ゾクッ…

背筋が凍りつく。
その拍手の音はフランドールの耳元から響いていたのだ。

Spell Card!!! 秘弾「そして誰もいなくなるか?」

その場が一瞬にして弾け、フランドールの姿が消える。
フランドールは無意識に生物としての危険を察し大技の1つであるスペルを放っていた。
秘弾「そして誰もいなくなるか?」は耐久系弾幕だ。
使用者の体と気配を消し、大量の弾で相手を殲滅するフランの切り札の1つ。
しかしフランドールはこれを自分の身を守るために使ったのだ。
フランドールは未知の相手による攻撃を受けないため、迎撃体制に入っていた。

「…それが貴方のスペルなのね」
「誰…!?」
「私は古明地こいし…ねぇフランドール!貴方と友達になりにきたの!」
「貴方がこいつらを差し向けた犯人ね」

姿は見えていなかったが、さっき自分が立っていた場所に向かってフランドールは話しかけた。
すると、ゆらっと空気が揺れそこから少女があらわれた。
身長はフランドール同じくらいで小柄、白に少しグレーがかかった髪に大きなボーラーハットと
心臓部にある閉じた瞳が古明地こいしの特徴だった。

「はじめまして」

こいしは丁寧にフランドールにお辞儀した。
そのお辞儀にフランドールは、

「…そして誰もいなくなるか?」

スペルで返事をした。
突如、こいしを目掛けて3方向から弾幕の雪崩が向かって来た。

「ふふっ、ずいぶんなごあいさつね。
 マナーがなってないわ。けど、こういうあいさつも嫌いじゃあないわ。
 スペル、弾幕のロールシャッハ!!」

Spell Card!!! 無意識「弾幕のロールシャッハ」

こいしのスペルの宣言から発動までのスピードは早く、猛スピードで迫ってきていた「そして誰もいなくなるか?」の弾幕と
こいしから発せられた「弾幕のロールシャッハ」の弾幕がぶつかり大気が大きな悲鳴をあげた。
爆発が起きる。
――と同時にフランドールはこいしの気配が消えたのを感じ取った。

「(…気配が消えた…やった?)」

「そして誰もいなくなるか?」は相手が消滅するまで追い続ける。その追跡も終わっていたことと「そして誰もいなくなるか?」で
自分自身の姿を消していて、こいしに見つかっていないという思っていたことがフランドールを油断させた。

「ちょっとやりすぎちゃったかしら?」

最初、こいしが拍手をしたときも気配を完全に殺してフランドールのすぐ隣まで来ていたことも忘れて、
フランドールは「そして誰もいなくなるか?」のスペルをこともあろうに解除したのだった。

その油断したフランドールの背中に――こいしの手がずぶりと突き刺さった。

「――うげっ…!!!」

たまらず口から大量の血液を地面に落とす。

「あーあ、油断しちゃったね。ダメだよー、私みたいな小石のような存在みたいな妖怪でも油断したら何があるかわからないんだから。アハハ!」

夜ならいざ知らず、こんな太陽が登っている真昼間に致命傷はいくら吸血鬼であるフランドールといえど避けたかった。
こいしはさらにぐりぐりと刺しこんだ手でフランドールの体を穿る。

「吸血鬼って不死身なんでしょ?」

傷口から噴出した血がこいしにかかる。
フランドールは首を捻り、後ろに立っているこいしを睨む。

「…舐めないで、この程度では残機1つも奪えないわよ」

そう言うと体中の筋肉を固めた。

「っ、抜けな…」
「クランベリートラップ!」

Spell Card!!! 禁忌「クランベリートラップ」

スペルによる弾幕が来ると思って身構えたこいしを
――フランドールは倒れるように後ろに飛び込み、おもいっきり地面に叩きつけた。





お空とお燐はフランドールとこいしの戦いの様子を見ていた。

「こいしさまと互角…!」
「う~ん、私たちじゃ適わないはずだねぇ~♪」
「くっ…お燐は悔しくないの?」
「あたしゃ、死体を集めるのは好きだけど死体にはなりたくないからね」
「…もうっ!」

お空は自分の核の力はこいしやフランドールが持つ力と質は違えどそうは変わらないと感じていた。

「(私に足りないのは…)」





フランドールとこいしは一緒に倒れこむ。
上になっていたフランドールは即座にこいしの手を抜いた。
体にぽっかりと空いた穴を右手で塞ぎその場から離れる。
そして、間髪いれずにこいしに弾幕を叩き込んだ。

「オラァ!!!」

弾幕がこいしにあたる直前に…また、こいしの気配が消える。
そしてまた爆発がおき、あたり一帯に爆煙が巻き起こる。
通常弾で仕留められる相手でないことはさっきの攻防でわかっていた。
今の弾幕はこいし狙いではなかった。
爆煙を起こしたかったのだ。

「(やりにくい相手…だけど)」

爆煙の中で通常の煙の流れとは違う、不自然な煙の流れをフランドールは決して見逃さなかった。

「(気配は消せても存在自体が消えているわけじゃない。
  確かにそこに居るという証拠!それが欲しかった)」

爆煙を起こした理由の1つ目はこいしが気配だけを消しているのか、それともそして誰もいなくなるか?のように自分の肉体を消してしまえるのかを知りたかった。
これによりフランドールのとれる戦法は大きく違ってくる。
正直前者でフランドールはほっとしていた。
そして爆煙を起こした理由の2つ目。

「(こんな太陽の下じゃ…さすがにやばい)」

それは太陽の遮断だった。
直射日光は吸血鬼の回復力の機能を奪う。
たしかに通常の場合であればそれほどたいした事はない。
しかし流血している場合は別だ。傷口に直射日光があたるとどうなるか…?
傷口に塩を塗ると痛いように、吸血鬼の場合は傷口に直射日光なのだ。

「(この隙に影に移動して… …くっ、昼間だとこんなに不利になるだなんて…)」

穴は半分以上再生していたが、血と一緒に失った魔力、さらに体を再生させるために使った魔力を考えると普通の妖怪なら一機分は確実に失っているくらいの傷だ。

「(だけど…おかしい。これくらいなら今までにも味わったことはあるのに…)」

昼間だからといっても、このあまりの再生の遅さにフランドールは少し焦っていたのだ。
そして、つい先日の姉との会話を思い出していた。





それは数日前の夜の話だ。

「ねぇ、フラン?
 見える?」

レミリアはフランドールをお茶に呼び出すと唐突にそう言った。

「?」
「目を凝らして見て見なさい」

フランドールはレミリアが言ったとおり、目を凝らす。
するとフランドールは本当に目を凝らすだけですぐに理解した。

「あれ…お姉さま、弱くない?」

フランドールはレミリアの滲み出る魔力を見てそう言った。

「正解。さて、それはどうしてか分かる?」
「元か…」

そう言いかけて、レミリアが途中でフランドールの言葉を遮る。

「月よ」

レミリアはカップを持ち、紅い紅茶の水面に映った月を揺らす。
月はほとんど映っていなかったが。

「私たち吸血鬼にも、力が一番弱まるときがあるわ」
「それは初耳ね」
「…貴方はずっと地下に閉じ込めていたからね。
 でも、これからは外で戦うこともあるでしょうし憶えておきなさい」
「はいはい」

フランドールは適当な返事を返し、紅茶を口にした。

「以前、あの蓬莱人とやりあったときの事、憶えてるでしょ?」
「妹紅とのこと?」

半年前にフランドールは、一回紅魔館を抜け出したことがあった。
そのときに出会ったのが藤原妹紅だ。

「憶えてるけど…」
「貴方は一~二週間ほどここを離れてたけど、なにか自分の身体に変わった様子は起きなかったかしら?」
「ん~… …まぁ、妹紅に出会ってからどんどん私の力が高まっていくのは感じたけど…それくらい?」
「それは妹紅と出会って貴方が強くなったからじゃなくて、貴方がここを抜け出した日の月が『三日月』と呼ばれる月だったからよ」

それは月齢。
月の満ち欠け。





「(… …そうか。
  今日の月は…まだ上弦だったわね)」

なんとか影に移動して身体を休める。

「…スペル、フォーオブアカインド」

Spell Card!!! 禁忌「フォーオブアカインド」

フォーオブアカインド。3体の自分の分身を作ることが可能なスペル。
それをフランドールは力の調整をして、分身を1体だけ作り出した。

「…時間稼ぎをお願いね」

そういうと分身は爆煙の中に消え去った。

「(もう少し、ここから離れないと)」

フランドールに糸が放たれたのはそのときだった。

「!」

すぐにこいしの攻撃だと感じ、フランドールがその糸を切ろうとしたが

「(待って!)」

と、脳に響くその一言があった為、フランドールは止まった。

「(誰?)」
「(貴方の敵じゃないわ。
  私はヤマメ。地底からこいしを追って来た者よ)」

糸電話――フランドールはそんな技術は知らなかったが、これはヤマメが得意とする技術の1つだった。
細い糸だが、これは土蜘蛛の糸で強度も柔軟性もあり1本でもはりがね並の耐久性があるものだった。

「(貴方をここから逃がすわ。糸に捕まって!)」
「(いきなりなにっ?!)」
「(いいから!)」

遠くから糸が何本も放たれる。

「(ええっ?)」

それらが全てフランドールに接着すると、ヤマメは問答無用でフランドールの身体を空中に釣り上げて、自分の方にフランドールを引き寄せた。
ヤマメとフランドールの距離は500メートルほどであったがそれが数秒で縮まる。
もちろん空中散歩させられているフランドールはたまったものではなかったが。






Spell Break!! 禁忌「フォーオブアカインド」

「…あーあ、逃げられちゃったか」

首と四肢が胴体から切り離されたフランドールの分身は、爆煙が消えると太陽の光が身体に当たり、分身は灰になって消えていった。

「でもこれからもっと面白くなるよ、フランドール。
 …お空、里に火をつけなさい。地上に住む者は人妖問わず殺すわよ♪」

「はい!」

元気に頷くお空を横目に

「(なんだか想像してたよりやばいことになりそう…さとりさま…)」

お燐は少し心配そうにこいしとお空を見ていた。


続く。
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